メカ設計者のための用語辞典。今回は「3Dプリンタ」について解説する。
「3Dプリンタ」は、部品加工装置の一種である。立体形状を横に薄切り(スライス)したデータを用いて、材料を少しずつ積み上げて形状を造形していく、いわゆる「積層造形機」(または「3次元造形機」)のことを指す。英語では積層造形法のことを「Additive Manufacturing(AM)」と訳す。国内ではその日本語訳である「付加製造」と呼ばれることがある。3D Printerの直訳である「立体印刷機」と呼ばれることもある。3Dプリンタは、汎用(はんよう)プラスチックやエンジニアリングプラスチックの他、カーボンファイバーやガラスファイバーを含んだ樹脂など、さまざまな材料による装置が存在する。材料の性状は用いられる装置の手法により、固形のものや粉体、液体などさまざまである。3Dプリンタの造形においては、画像データではなく、STLなどポリゴンの3Dデータの用意が必須である。
3Dプリンタは、造形したい形状の断面の層を少しずつ重ねることで造形していくというプロセスであるため、中空やアンダーカット、入り組んだ部位などが自在に作成できる。切削や射出成形と比較して自由度の高い形状作成が可能である。しかし、製作スピードや加工精度は従来の加工法に劣り、少なくとも現状の技術では大量生産には不向きな加工法である。製造業における用途としてはモックアップ製作や部品試作が最も多いが、近年は一品一様や多品種少量生産の製品における活用事例も見られるようになってきている。
「3Dプリンタ」という呼称は、バインダージェット式のフルカラー3Dプリンタを販売していたZ Corporationによる製品名「3Dプリンティング」が起源であるといわれる。現在は、欧米メーカーを中心に「3Dプリンタ」という呼称が頻繁に使われる。よって、3Dプリンタという呼称は、特定の加工法というより、マーケティング用語であるという見方もある。
積層造形技術は1980年代から存在する。現在、その手法は、派生したものなどを含めると多岐にわたる。その黎明(れいめい)期からある手法は、FDM(熱溶解積層)方式とSLA(光造形法)方式である。FDMは、フィラメント(リールに巻かれた線)状になった熱可塑性樹脂を少しずつ溶解させながら造形データの断面を描き、樹脂を固化させながら積層していく。光造形は、半液状の紫外線硬化樹脂の表面に紫外線を照射して、造形データの断面形状になるよう固化させて層を作成し、少しずつ積み上げていく。この2つの手法は1980年代から2000年初めにかけて、大手3Dプリンタメーカーらが関連特許を所有していた。それらの特許が次々と失効したことから、3Dプリンタ以外の装置メーカーや、スタートアップなどの参入が多数みられ、本体価格10万円前後の装置が次々と登場した。
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