「1Dモデリング」に関する連載。最終回となる連載第45回では、「ひとのモデリング」をテーマに、これまでの課題と解決法、そして、これからのひとのモデリングと、今後のモデリングの姿について解説する。
今回は連載の最終回である。今まで、1Dモデリングとして“もの”のモデリングを中心に扱ってきた。しかしながら、ものを扱うのは“ひと”である。ひとのモデリングも、ものと同じ枠組みで表現できるとよい。
そこで、本連載でこれまでに扱ってきたひとのモデリングの事例(連載第18回、第19回、第26回)と、それ以外のひとのモデリングをおさらいするとともに、そこでの課題を明らかにし、差し当たってできる改善法について紹介する。次に、もののモデリングと同様の法則が、ひとのモデリングにも適用可能であるとの前提に立ち、その実現可能性と、実現に向けて必要なことについて考える。最後に、“これからのモデリングの姿”について展望を示す。
注1:「モノ」「もの」の表記について、本稿では「モノ:生産要素または経営資源といった手段」「もの:生産活動により付加価値を持った成果物」と使い分けて表記しています。また、「人」「ヒト」「ひと」の表記については「人:一般的」「ヒト:生物学的」「ひと:人間的(ものとの対比)」と使い分けています。
ひとが感じる快適性には、各人の心理的要因もあり、一律に定義することは困難だ。ただし、図1に示すように、室内にひとが存在し、ひと自体がMなる熱を内在している状態を、熱モデルとして考えることは可能である。
すなわち、ひとから外に向かって、蒸発による熱E、対流による熱C、ふく射による熱Rが放出される。また、ひとが外部に対して仕事Wを行っていると考える。さらに、ひとと床の間に伝導による熱放出Kも考えられるが、これは小さいものとして本稿では省略する。
なお、図中では矢印の方向を+(プラス)とする。例えば、ふく射によって太陽光を浴びている場合、太陽光の温度が高いため、ふく射による熱は図とは逆方向に、すなわちひとに向かって入射する。このような状態において、ひとの体内に蓄積される熱Sは、以下の式1で定義される。
ここで、S=0のとき、ひとと外部との間に熱の出入りはなく、ひとが快適な状態にあると考える。一方、S>0の場合は、体内に熱が蓄積されている状態なので、ひとは暑さを感じる。逆に、S<0のときは、体内から熱が外へ逃げている状態であるため、寒く感じると考えられる。
図1を、個人ごとに異なる活動指標(活動自体が激しいほど、代謝量は大きい)や服装指標(厚着になるほど、断熱効果が大きくなる)を考慮して熱モデルを作成し、最終的にPMV(快適指標:Predicted Mean Vote)とPPD(不快割合:Predicted Percentage Dissatisfied)の2つの指標を定義し、図にしたものが図2である。
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