これからの「ひとのモデリング」 〜“もの”も“ひと”も共通の表現式で〜1Dモデリングの勘所(45)(5/6 ページ)

» 2025年07月23日 06時00分 公開

乗り心地

 乗り心地に関しては、自動車を中心に多くの研究が行われており、規格化されている場合もある。図12に、Meisterの振動感覚曲線を示す。

Meisterの振動感覚曲線 図12 Meisterの振動感覚曲線[クリックで拡大]

 入力として、縦軸に加速度、横軸にその周波数を取り、ひとの感覚を出力として曲線で示している。図中では、「やや不快」「振動をはっきり感じるが不快ではない」という2本の線(オリジナルでは6本の線が示されている)が引かれている。この図から、乗り心地の限界曲線はこの2本の線の間にあると考えることができる。

 すなわち、5Hzの入力に対してひとは最も敏感であることを示している。この要因はさまざまであるが、一つには、ひとが一種の振動系を構成しており、ひとの共振点が5Hzに存在すると考えることができる。

 一方、ひとが振動(加速度)を検知するセンサーは、半規管の根元にある耳石器である。その大まかな位置を図13に示す。耳石器は、球形嚢(きゅうけいのう)と卵形嚢(らんけいのう)から構成されており、球形嚢は上下方向の振動を、卵形嚢は水平方向の振動を検知する。

ひとの振動検知部位 図13 ひとの振動検知部位[クリックで拡大]

 例えば、エレベーターの乗り心地においては、多くの場合、振動は足元から伝わってくる。従って、図14に示すように、ひとを頭部付近に集中質量を有するMCKモデルで表現することは妥当と考えられる。

ひとのモデリング 図14 ひとのモデリング[クリックで拡大]

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