3Dプリント×切削×デジタルシボによる新工法が樹脂加工の在り方を変えるものづくり ワールド[東京]2025

ExtraBoldは「第37回 ものづくり ワールド[東京]」において、ロボットアームを活用した独自のペレット式3Dプリンタと樹脂切削加工を融合した新たな工法を提案していた。

» 2025年07月17日 06時15分 公開
[八木沢篤MONOist]

 ExtraBoldは「第37回 ものづくり ワールド[東京]」(会期:2025年7月9〜11日/会場:幕張メッセ)の構成展の1つである「第8回 次世代 3Dプリンタ展」に出展した岩間工業所のブースにおいて、ロボットアームを活用した独自のペレット式3Dプリンタと樹脂切削加工を融合した新たな工法を提案していた。

岩間工業所のブース 岩間工業所のブース[クリックで拡大]

 同工法ではまず、ロボットアームが造形テーブルを動かしながら、ペレット材を用いて積層造形を行う同社の「REX-Series BUTLER fabrication」によって、ストック(ワーク)を造形する。このとき、造形されるストックは目的とする部品形状を起点として作られるため、切削加工における粗取り工程を省略できる。そして、完成したストックを一般的な切削加工機に載せ替え、仕上げ加工を施すことで、高品質な樹脂部品に仕上げることができる。無駄のない形状でストックを造形することで、加工時間と樹脂廃棄量(切粉)の大幅な削減が可能となる。

 さらに、同社が保有するデジタル加飾技術「デジタルシボ D3テクスチャー」を進化させた新たな手法も取り入れることが可能で、これと組み合わせることで、高額なソフトウェアなどを用いることなく、従来の金型シボでは困難だった連続模様や自由な意匠表現などを部品表面に施すことができる。また、ストックの造形に用いるペレット材は、一般的なペレット材やメーカー支給品に加え、内製したリサイクルペレットなども使用可能であり、近年注目されているサステナブル材料の活用促進にも寄与する。

新提案の工法によって製作された自動車用ダッシュボードパネルを想定したデザインモデルのストック(左)とサンプル(右の4つの部品) 新提案の工法によって製作された自動車用ダッシュボードパネルを想定したデザインモデルのストック(左)とサンプル(右の4つの部品)[クリックで拡大]

 今回の展示では、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)に、もみ殻由来のバイオ炭フレークを混練した複合材料を使用し、同工法によって製作された自動車用ダッシュボードパネルを想定したデザインモデルが披露された。表面の意匠には新たに開発されたD3テクスチャー(網代編み、ハンマートーン、バブルパターン、樹皮)が施されており、意匠性と機能性を両立したデザインを実現していた。

「今回サンプルとして用意した自動車用ダッシュボードパネルの場合、従来工法では8時間以上かかるが、新工法であればストックの造形に30〜40分程度、切削に関してはテクスチャー加工まで含めて2時間ほどで完了できる。従来必要だったストック加工(事前に材料を加工する工程)といった段取りが一切不要となり、粗取り形状を素早く3Dプリントし、切削で一気に仕上げるといった使い方が可能だ」(説明員)

 同工法の要となっているのが、同社の研究チームによって自社開発された、切削加工をターゲットとする専用スライサーだ。独自の造形パスアルゴリズムにより、3Dプリンタでストック形状を造形する際のレイヤー間の空隙を極限まで抑えることが可能となった。その結果、通常の樹脂切削加工で使用される無垢(むく)の樹脂材料のように、中身の詰まったストックを造形できる。

「近年、金属部品をエンジニアリングプラスチックなどの高機能樹脂に置き換える動きが加速しているが、今回の新工法はまさにそうしたニーズに応えるものだ。金型を作るとコストが見合わない、従来の樹脂切削では時間も廃棄量も一向に減らない――。そんな現状を覆す決定打として提案していきたい」(説明員)

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