このように銅配線が多くの努力の積み重ねにより、つい数年前までは光でなければ不可能と思われていた10Gbpsの壁を破り、28G〜32Gbps程度の転送速度を実現しています。
今後もこのような努力により、32Gbps以上の速度を徐々に実現していくと思われます。
しかし、それは、素材や回路、方式などの改良により徐々に実現されるもので飛躍的な高速化が実現できるものではありません。しかし、2017年には400Gb イーサネットの規格化がマイルストーンとしてあり、それには40Gbpsのバックプレーンと基板上のデータ転送が含まれています。
2017年の規格化ということは、2015年には、40Gbpsのデータ転送が評価できる状況になければ、タイミング的に不可能です。実は、現在の28Gbps(14GHz)の転送技術を使って倍の58Gbpsのデータ転送を実現させるためのシステム検証が行われはじめています。
現在、シリアルデータ転送は「ハイ=1」と「ロー=0」のNRZ方式でデータを送っています(図7)。
これは1/2クロックで、1ビットのデータが送れます(図8)。
これを「V1=11」「V2=10」「V3=01」「V4=00」と信号の電圧を変化させることにより、1/2クロックで2ビットのデータを送れれば、14GHzで56Gbpsのデータが送れるようになります(図9)。
この4値によるデータ転送方式はPAM(Pulse Amplitude Modulation=パルス振幅変調)4と呼ばれ、既に100Gbイーサネットのケーブル伝送などに使われています(図10)。
しかし、2値に比べ、4値でのデータ転送にはいろいろな困難が伴います。
信号品質に対しても、2値であれば、Eyeの開口に対しては、多少のオーバシュートやアンダシュートは認められてきましたが、4値になると、中間値のオーバシュートやアンダシュートは他の値の開口を妨げます(図11)。
当然、58Gbps転送のシステム検証は、単にデータが転送できることの検証ではなく、測定技術、ビットエラーレートをはじめとする、信頼性評価、測定技術やシミュレーション技術の確立、コンプライアンス試験の確立など多岐にわたり、時間もかかります。
現在、このような4値のドライバ回路やレシーバ回路は既にIC回路として実現されており、評価がはじまっています。
2値のNRZ方式の高速化、他のデータ圧縮技術、PAM4だけでなく、さらに多値化によるクロックを遅くしての転送方式なども視野に入れながら、データ転送の高速化が検討されています。
前田 真一(マエダ シンイチ)
KEI Systems、日本サーキット。日米で、高速システムの開発/解析コンサルティングを手掛ける。
近著:「現場の即戦力シリーズ 見てわかる高速回路のノイズ解析」(技術評論社)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.