Quest Globalの日本法人クエスト・グローバル・ジャパンが東京都内で記者会見を開き、日本の半導体製造装置開発におけるエンジニア不足の現状を語った。
経済安全保障などの観点から半導体産業が関心を集め、Rapidus(ラピダス)には日本政府も巨額の支援をしている。その中で、Quest Global(クエスト・グローバル)の日本法人であるクエスト・グローバル・ジャパン 代表取締役社長の貫名聡氏は、2025年5月28日、東京都内で同社が開いた記者会見において「国内で半導体製造装置のエンジニアが6000人不足している」と、日本の半導体製造装置開発における人材不足の現状を語った。
1997年設立のクエスト・グローバルは、シンガポールに本社を置き、18カ国に拠点を持つ。事業はプロダクトエンジニアリングサービスに特化しており、自動車やエネルギー、航空宇宙/防衛、ハイテク/医療機器/通信、半導体などの分野に精通したエンジニアを抱えている。約2万1000人の従業員がおり、オフショアも含めて2400人以上のエンジニアが日本の顧客向けに従事している。そのうち、日本人の割合は50%だ。
半導体業界においては、グローバルで3000人以上のエンジニアが半導体製造装置メーカーやデバイス製造メーカーに従事している。大手半導体製造装置メーカー10社のうち5社が、大手デバイス製造メーカー10社のうち7社がパートナーになっているという。2025年3月には日本のRapidus(ラピダス)との提携や、FPGA向けのVLSI設計を手掛ける米国企業Alpha-NumeroTechnology Solutionsの買収を発表した。
日本の半導体製造装置企業で2万4000人がエンジニアとして従事している中で(部品メーカーなどは対象外)、クエスト・グローバルではソフトウェアとハードウェアのエンジニアがそれぞれ3000人足りていないと見る。
「ソフトウェアに関しては成り手はいるが、需要が大きすぎてエンジニアの数が追いていない。ハードウェアのエンジニアに関しては、若い人たちがなりたい職業ではなくなってきており、人材のパイプラインがどんどん細くなっている」(貫名氏)
エンジニア不足を踏まえて、クエスト・グローバルでは日本の半導体製造装置開発、設計の現場における課題が大きく分けて3つあるとする。1つ目は、半導体製造装置の延命によるレガシー装置のソフトウェアメンテナンスに対する人材不足だ。半導体製造装置は導入されてから、稼働を終えるまでの期間が長い。40年近く前の半導体製造装置がいまだに稼働している例もある。装置に使われているコンピュータやOSはどんどんアップデートしており、それらに対応しなくてはいけない。
クエスト・グローバル・ジャパン セミコンダクターバーティカル ゼネラルマネジャーの高木庸司氏は「開発に携わったエンジニアはもう引退しており、装置の維持をする人材が問題になっている。古い技術やプログラミング言語を使っているため、半導体製造装置メーカーも本当は新製品の開発によりリソースを割きたいが、断ると今までの信頼を失ってしまう」と背景を話す。
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