実装分野の最新技術を分かりやすく紹介する前田真一氏の連載「最新実装技術あれこれ塾」。第52回はDDR4の市場と技術について解説する。
DDR4メモリの規格は2012年9月にJEDECから発表されました。規格が正式発表されて、早くも3年(※「エレクトロニクス実装技術」2015年7月号掲載当時)がたとうとしていますが、まだDDR4メモリはあまり普及しているとはいえません。
2015年1月にアメリカのシリコンバレーで開催されたDesignCon(写真)では多くの測定器メーカーやEDAベンダー、IPベンダーなどからDDR4への対応についてデモしていましたが、そこで実際にDDR4メモリを使ったPCを使っていたのは、1社だけでした
これは、DDR4メモリは非常に注目されている技術ではあるものの、実際に採用されているPCは少ないということを示しています。
逆に、多くの会社がDDR4 I/Fを実装したLSIやIPを発表したり、DDR4メモリの測定、シミュレーション環境などを発表したりしていることは、そろそろDDR4メモリが一般にも普及し始めるだろうと期待できます。
普及の立ち上がりが遅いといわれたDDR3メモリの時と比べて、DDR4メモリの立ち上がりはそれよりさらに遅くなっています。
DDR3メモリは2005年に最初の規格が発表され、2007年頃から市場に出るようになりました。2007年にインテルのCPU、2009年にAMDのCPUがDDR3メモリをサポートしはじめました。それから急激にDDR3が普及し、2010年頃からは、DDR2メモリよりもDDR3メモリが多く普及するようになりました。
DDR3メモリの立ち上がりが遅かった理由は、DDR3メモリをサポートするCPUやチップセットの発売が遅れたことです。
DDR4では、インテルは2014年にハイエンドのCPUでDDR4メモリのサポートを開始しました。2015年はやっとミドルクラスでもサポートするようになっています。ハイエンドからのDDR4メモリサポートは、業界の共通の戦略です。
DDR4メモリはDDR3メモリに比べ、速度は高速ですが、制御は格段に複雑になっています。また、容量を大きくするため、メモリチップの3次元実装がされています(図1)。
このため、DDR4メモリは価格が高いため、DDR4メモリを採用できるのは価格よりも性能が重視される高性能機になります。AMDでも2015年から上級機種でDDR4のサポートを開始しました。メモリメーカーも、当分はDDR4メモリは価格を無理に下げてまで、量を売るのではなく、量が少なくても利益が上がる価格で売る戦略を取っています。
これにはDDR3メモリの販売で、メモリ各社が価格競争に陥り、ついにメモリメーカーが1社破綻した際の教訓でもあります。
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