DDR4メモリの重要な目的は、転送速度の高速化はもちろんですが、それ以上に、消費電力の低減があります。
スーパーコンピュータの京では稼働させるための30MWの変電設備が話題になりました(図10)。
現在、データセンターの消費電力が世界的な社会問題になっています。アメリカでも、データセンターを建設しようとすると、電力供給が問題とされます。
モバイル携帯機器では、常に話題となっている電力問題は、サーバなど大規模システムでも大きな問題なのです。
DDR4ではDDR3の1.5V電源電圧に対して1.2Vに低電圧化して消費電力の低減を図っています。電源電圧を1.5Vから1.2Vにすると消費電力は36%低減できます。同じ目的で、DDR3でも電源電圧を1.35Vに下げたDDR3L規格を作りました。
DDR3からDDR3Lへの変更では、消費電力は19%停電し、DDR3LをDDR4に変更すると消費電力は21%の低減になります(表2)。
しかし、DDR4では、単に電源電圧を下げるだけではなく、いろいろな技術を使ってさらなる消費電力を削減しています。その1つはリフレッシュの最適化です。DRAMメモリは、各ビット記憶に小さなコンデンサを使い、このノンデンサに電荷があるかないかで0,1を記憶しています(図11)。
コンデンサに電荷があれば、電位がHighになり、コンデンサに電荷がなければ、電位はLowになります。しかし、コンデンサに蓄えられた電荷は時間とともに放電して電位が低下することでHighが認識できなくなってしまいます。
このため、HighをHighと認識できる間に、再度データを書き込んで、電荷を再チャージする必要があります。このためには、本来のデータアクセスしないメモリに対しても一定時間ごとにメモリ自身がデータをRead/Writeしなければなりません。
これをリフレッシュと呼びます。
データのRead/Writeには当然電力を消費します。これまでのDDRメモリ規格では、使用していないアドレスを含み、メモリ全体に対してリフレッシュを実行し、全てのデータを保全していました。しかし、DDR4メモリ規格では、リフレッシュを実行するアドレスが指定でき、使用していないなどデータが消えても問題ないアドレスにはリフレッシュを実行しないようにすることが可能になりました。
コンデンサに蓄えられた電荷は、温度が高いほど運動エネルギーが大きく、早く放電します。DDR3では最悪の場合でも電荷が消失しないように「オンだが高い」場合を想定して、早めにリフレッシュを実行していました。
DDR4では、素子の温度を調べ、温度に応じてリフレッシュを実行するタイミングを早くしたり遅くしたりする機能が付加されました。このリフレッシュ機能の改善により、リフレッシュに必要な電力消費を大幅に抑えることができました。
このリフレッシュ機能の改善は、実は既にモバイル機器用のLPDDR(Low Power DDR)規格では以前から採用されていました。サーバや大型PCでも消費電力が問題視されてきたため、DDR4で採用されました。
この他、DDR4メモリでは、独自機能を使って消費電力削減の努力をしています。
前田 真一(マエダ シンイチ)
KEI Systems、日本サーキット。日米で、高速システムの開発/解析コンサルティングを手掛ける。
近著:「現場の即戦力シリーズ 見てわかる高速回路のノイズ解析」(技術評論社)
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