実装分野の最新技術を分かりやすく紹介する前田真一氏の連載「最新実装技術あれこれ塾」。第43回はPCI Express Gen4について解説する。
本連載は「エレクトロニクス実装技術」2014年10月号の記事を転載しています。
2014年6月に「PCI Express」の規格を作成しているPCI-SIGが主催するPCI-SIG Developers Conference 2014がアメリカのサンタクララ・コンベンションセンターで開催されました。
ここで、ここ数年話題になっていた「PCI Express Gen4」についての技術が発表されました。
このPCI Express Gen4は現在、技術評価もほぼ終わり、2014年年末から2015年の前半に規格を発表する予定になっています(「エレクトロニクス実装技術」2014年10月号発行時点)。
この新しい規格について説明する前に、PCI Express規格について簡単に説明します。
PCI Expressは2002年にPCI-SIGによって最初の規格Gen1が発表されたバス規格です。1991年にインテルが発表したPCIバスは32/64ビットのデータを並列で転送する並列データバスで、ほぼ全てのコンピュータに採用されました(図1)。
PCIバスは転送速度を上げたり、5.0Vロジックから3.3Vロジックに電圧を拡張したりしたことで、1.0から3.0までバージョンアップしました。またさらに高速化したPCI-X規格も策定されました。
しかし、多くの並列データを同期させて転送する並列転送バスではデータの同期が困難で、高速化が頭打ちになってしまいました。バスの転送速度はクロック速度と1クロックで並列に転送するビット幅の積になります(図2)。
高速並列バスでは、ビット幅を大きくすると、同期を取るためにクロック速度を下げなければなりません。また、クロック速度を上げるためには、ビット幅を少なくしなければなりません(図3)。
結果として、並列バスでは、これ以上の高速化対応が困難になってなってしまいました。メモリバスは並列で非常に高速ですが、これは4/8ビットと比較的に小さいビット数で転送しています。しかもメモリバスは配線をできるだけ短くして配線しています。
しかし、どのようなコンピュータやインタフェースカードに接続される汎用データバスでも、規格で配線長さを短く制限してしまっては、設計が難しくなり、規格が普及しません。このため、配線長の制限を緩和し、誰でも安い基板を作れるような規格にする必要があります。
並列バスのデータ転送速度が誰でも設計、製造できる条件で、これ以上高速化するのが困難になり、直列転送方式が浮上しました。
新しい直列転送方式ではデータとクロックを変調をかけて同じ1ビットで送り、受け側で、データからクロックを生成し同期を取ってデータを受信します(図4)。このため、非常に高速にデータを転送することができます。
実際、並列バスのPCI-Xバスでは133MHzのクロックでしたが、少し前に規格化された直列の「PCI Express Gen1」では1.25GHzで、10倍近い速度になっています。しかし、並列バスでは8ビット並列で同程度、16ビット並列にすれば、直列転送方式よりも早くデータが転送できます。このため、PCI Expressでは直列伝送回路(「レーン」と呼びます)を4本・8本・16本と並列に並べ、転送速度を高速化しています。
例えば、8ビットの並列バスと8レーンの直転送を比べてみます。8ビットの並列バスでは1クロックで1バイト(8ビット)のデータが送れます。8クロックでは8バイトのデータが送れます(図5)。
8レーンの直列バスでは1クロックでは8つのデータの最初の1ビットだけ送られ、バイトデータの転送は終わっていません。8クロック目のデータが送られてはじめて、8レーンのデータにおのおののバイトデータの転送が終了します。
つまり、直列方式では、8クロック単位でで8バイトのデータを送ります。並列バスはリアルタイム転送ですが、直列転送はパケット転送になります。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.