第48回 機器内部シリアル接続規格前田真一の最新実装技術あれこれ塾(1/6 ページ)

実装分野の最新技術を分かりやすく紹介する前田真一氏の連載「最新実装技術あれこれ塾」。第48回は機器内部シリアル接続規格について解説する。

» 2016年02月10日 10時00分 公開
[前田真一実装技術/MONOist]
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本連載は「エレクトロニクス実装技術」2015年3月号の記事を転載しています。



編集部注:本記事の内容は「エレクトロニクス実装技術」2015年3月号掲載時点での情報となります。

1.液晶テレビ内接続

 他社との差別化や高付加価値化を求めて、液晶テレビは大画面化、高解像度化してきました。これはテレビがホームエンターテインメントの中心デバイスでありながら、他社との区別化につながる独自の新しい付加価値を見つけられないことによります。

 3Dテレビもインターネット接続も、ユーザーに受け入れらることなくヒットには結び付きませんでした。さらに、標準化の時代にあって、各社が全く同じ機能を付けたテレビを同時に製品化するため、他社との差別化にもなりません。結局は「安く」「きれい」「大画面」の基本性能の競争になります。これが、大画面で高解像度の製品を「安く」作る競争へとつながっています。

 大画面の高解像度液晶テレビを安く作るため、テレビ内部の回路が規格化されて、技術の差がなくなりました。ブラウン菅では、電子銃から電子ビームを放射し、それを偏光させてブラウン菅表面に照射しています(図1)。このビームがブラウン菅表面に塗布されている蛍光体を発光させることで映像を作ります。

図1:ブラウン管

 これに対し、液晶では、データ線(X)とアドレス線(Y)と呼ばれるX−Yマトリックスで駆動しています(図2)。

図2:液晶回路

 おのおのの水平、垂直ラインの交点が個々の画素(Pixel)となります。解像度が高くなればラインの数がそのまま増えます。また、画面が大きくなれば水平、垂直ラインの幅も広くなります(図3)。

図3:大画面化

 アクティブとなる液晶のドライブ回路は、低消費電力化と応答速度の向上、高細密化などから、各社、いろいろと考えられています。

 液晶テレビでは、この膨大で、長く広いX-Yラインを正確なタイミングで駆動する必要があります。

 このX-Yドライバの駆動タイミングを制御する回路をT-CON(Timing Control)回路と呼びます。

 データライン、アドレスラインが長くなると、配線の伝搬遅延のため一番短いラインの交点と一番遠いラインの交点では、タイミングがずれてしまいます(図4)。

図4:配線長さによるスキュー

 また、解像度が高くなるとドライバ回路が高速動作する必要があり、回路が高価になると同時に消費電力の上昇、放射ノイズの増大を招きます。

 このため、大型液晶パネルでは、駆動回路ブロックを小さく分割し、データライン、アドレスラインが長くならないようにしています(図5)。

図5:大型液晶パネルの分割(16分割)(出典:シャープ技報 第104号)

 このT-Conからドライバへの信号伝送にはシリアル伝送方式が使われ、複数の会社や団体から異なる方式のICやライセンスが発表されています。

 大型液晶パネルは携帯機器のビデオ信号伝送に比べ、配線が非常に長くなります。それに対して、場所的な余裕はあります。

 このため、信号の並列度を多くし、信号の周波数を下げたほうが有利となります。信号周波数が下がれば、タイミング的に有利になると同時に放射ノイズが抑えられます。

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