カーエレクトロニクスは急速にマーケットサイズが広がっています。家電やスマホなどのマーケットが飽和したり、急激な価格低下の波にさらされているエレクトロニクス業界は、自動車に大きな期待をかけています。
カーナビは大画面化、高解像度化し、カーエンターティメントとして、DVDプレーヤーやBlu-rayプレーヤーと液晶テレビがリアシートに取り付けられるなどしています。今後、バックモニターや、サラウンドビュー、衝突防止装置、自動運転装置など、今後、ますます車載ビデオ信号処理のマーケットは広がると考えられています。
それに伴い、車載ビデオも量が増えると同時に大画面化、高解像度化が進み、ビデオ信号転送速度の向上が要求されます。
このような、大きなマーケットが見込まれる車載ビデオ信号処理には多くの規格が提案されています。
車載では、消費電力の問題はありませんが、ハーネスを軽くするため、信号の数を減らすことが要求されます。
また、電磁放射ノイズを抑えることは当然ですが、逆にノイズに対する耐性も強く要求されます。特に自動車は信頼性が強く要求されます。ノイズにより、衝突予防装置が誤動作するようなことは絶対に認められません。
また、燃費の向上につながる軽量化のため、信号を少なくしてハーネスを軽くすることが求められます。
消費電力に対しては、携帯機器や家電製品よりは余裕があります。
ソニーが1996年にノートPC用の規格として発表、1998年に製品化したシリアルのビデオ転送方式です。ケーブルが少なく軽くできるので、現在、カーナビのビデオ信号転送などに広く使われています。
ハーネスを軽くするため、信号は1対の差動信号のみで、転送し、2.5Gbpsで、ケーブルは最大10mです。
今後は、さらに高速で長距離伝送を可能にするため、光ケーブル化の構想があります。
LVDS規格のTIが2010年に回路をLVDSからCML(Current Mode Logic)に変更して10メートルのハーネスで、3Gbpsを伝送するPFD-Link IIIを車載ビデオをターゲットに規定しました。
ザインエレクトロニクスが2013年に車載用の画像転送方式として、eDriConを発表しました。やはり、今後大きく伸びる市場を狙ったものです。
技術的には、CalDriConよりもオリジナルとなった技術であるV-by-Oneに近い仕様で、埋め込みクロック方式を使い、1.2 Gbpsの転送速度です。
チャネル数は4でビデオ信号と制御信号を送ります。
ここまで、ビデオ信号のシリアル転送規格を紹介してきましたが、まだ、他にも規格はあり、今後も新しい規格が出てきます。
ここまでの規格を図18に整理しました。
前田 真一(マエダ シンイチ)
KEI Systems、日本サーキット。日米で、高速システムの開発/解析コンサルティングを手掛ける。
近著:「現場の即戦力シリーズ 見てわかる高速回路のノイズ解析」(技術評論社)
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