横河電機は、発表から50周年を迎えた分散形制御システム(DCS)「CENTUM」のこれまでの歩みを振り返るとともに、10世代目となる「CENTUM VP リリース7」のコンセプトおよび同日販売を開始した「リリース7.01」の概要を発表した。
横河電機は2025年6月3日、東京都内で開いた記者会見において、発表から50周年を迎えた分散形制御システム(DCS)「CENTUM」のこれまでの歩みを振り返るとともに、10世代目となる「CENTUM VP リリース7」のコンセプトおよび同日販売を開始した「リリース7.01」の概要を発表した。
横河電機のCENTUMは1975年に発表されて以降、累計で100カ国以上に3万以上のシステムが導入され、石油精製や石油化学、高機能化学、繊維、鉄鋼、医療、食品などの産業を支えている。CENTUMはラテン語で100を意味し、計装の100%自動化を目指そうとした開発者の思いも込められたとされる。
かつてのプラントでは人が機械式計器を見ながら現場で操作していたが、空気式計器が実用化されると、1940年代には空気圧の伝送によって計器に送られ、操作、監視することが可能になった。1960年代には電気信号を使った電子機器やデジタルコンピュータによるシステムが主流に。ただ、当時のデジタルコンピュータは高価だったため、制御と操作監視機能を1台で行っていたという。センサーから信号を読み込んで、制御、演算、バルブへの操作指示を行う制御ループを、1台のコンピュータで数百回処理していた。
1915年創業の横河電機は当初、工業計器を製造していたが、やがて計装工事も手掛けるようになり、1960年にはコンピュータによるデジタル制御の技術開発に着手。1962年にCCS(Computer Control System)の投入に至った。
1960〜70年代にかけて石油化学プラントなどが大規模化、複雑化し、当時の集中型制御システムではデータ量や処理能力が限界に近づいていた。集中処理では、システムの一部の故障や動作停止がプラント全体の操業に影響する。そこで横河電機が生み出したのが、機能は分散し、情報は集中するという分散処理だ。
横河電機 デジタルソリューション統括本部長の竹岡一彦氏は「当時のCENTUMにおける新しい分散制御という考え方、マイクロプロセッサ技術、分散したシステムをつなぐ制御バスを取り入れた分散型制御システムは、従来とは全く異なるものだった。ただ、新しい時代の幕開けに果敢にチャレンジしたいということで導入したユーザーがたくさんいた」と語る。
その後、ネットワーク化と情報システムの発展、インターネットの登場などを経て、1988年に第3世代として「CENTUM-XL」を発表。ERPなど事業系システムとの連携や人間工学に基づくユニバーサルデザインを取り入れながら世代を重ね、2014年には第9世代の「CENTUMVP R6」が投入された。
今、外部環境の不確実性が高まり、製造現場に求められる条件は複雑化している。プラントの操業が止まれば損失は莫大であり、環境への負担も生じる。そのため、あらためて安定操業が重要になっている。無駄のない安定操業とともに、働き方改革も含めて、産業における自動化から自律化を推進することが、持続可能な社会と企業の成長の実現に欠かせない。
「横河電機はCENTUMを中心に、デジタルツイン、自律制御AI(人工知能)、オープンアーキテクチャモデルを実現するネットワーク機能の実装に特に技術的な優位性を持つ。これらを生かして、産業における自律化を実現する」(竹岡氏)
横河電機が考える現在のプラント操業の課題は、大きく分けて4つある。
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