――日本の大手プリンタメーカーから3Dプリンタが発売される可能性はあるか。
シェン氏 可能性はゼロではない。実は、われわれが3Dプリンタの開発に着手する前、一度、日本の大手プリンタメーカーに共同開発の打診をしたことがある。しかし、その当時はまだ3Dプリンタ市場の規模も小さく、先行きが不透明だったため、その話は実現しなかった。ただ、今は確実に市場が作られつつある。
3Dプリンタの製品化で難しいのは、3Dプリンタには複数の出力方式があることだ。新規市場向けに製品を開発する際、企業が最も気を付けなければならないのが“技術の選択”である。われわれは現状、熱溶解積層方式と光造形方式の2つの方式を採用した製品をラインアップしているが、基本的にはあらゆる方式の技術的な検証や研究を進めている。
だから、今後、日本のメーカーから3Dプリンタの開発に関する相談があった場合でも、どの出力方式であろうと協力体制を構築できる用意はある。既にわれわれには、3Dプリンタの開発経験があり、生産のノウハウがあり、販売の経験があり、市場からフィードバックされた生きた情報がある。もし、声を掛けてもらえたら喜んで協力したいと思う。
――パーソナル3Dプリンタは本当に一家に1台普及するのか。
シェン氏 私は10年後、20年後に必ず家庭やオフィスに1台、3Dプリンタが普及すると信じている。ただ、どのような形で家庭内に存在していくのか正確に予測することはできない。今や家庭にあって当たり前の電子レンジやPCも、誕生した当初、ここまで普及すると誰が予測できただろうか。3Dプリンタは、電子レンジやPCと同じだと思っている。
どうだろう。この先、20年後にデスクトップPCは家庭内にあるだろうか。おそらく存在していないだろう。もしかすると、ノートPCでさえもなくなっているかもしれない。ドキュメント用のプリンタもきっとないだろう。
しかし、20年後の未来、3Dプリンタは必ず家庭内に存在している。そして、いずれ1台99ドルの3Dプリンタが販売されるときもくるだろう。それを信じるとか、実現させるとかではなく、テクノロジーの進化がそうさせるのだ。そして、そうした流れの中には、新しいビジネスチャンスが必ずある。
その一方で、3Dプリンタの普及のためには、いくつもの技術的なハードルをクリアする必要がある。現状、パーソナル3Dプリンタが抱える課題点は、「造形スピード」「材料」「多彩(カラー)」だ。中には技術的に難しいものもあるが、われわれは、これらの課題に対しての研究開発を日々進めている。
――今後の新しい取り組みについて教えてほしい。例えば、新素材や3Dスキャナなどの発売の可能性はあるか。
シェン氏 ご存じの「フードプリンタ」に関しては、食品メーカーなどとのコラボレーションを考えながら製品化に向けた準備を進めている。日本でも展開する予定だ。また、製品化はまだ分からないが、要望の多いフルカラー対応の研究開発も行っているし、新しい素材の開発にも取り組んでいる。
シェン氏 製品化という意味では、“モデリングができないと3Dデータが作れない”という課題を解決するために、3Dスキャナを世に送り出す計画だ。恐らく、ハンディタイプ、据え置きタイプなど、2〜3種類の3Dスキャナを近い将来、発表できるだろう。
それと「3Dペン」についても技術的には製品化できるが、実際に発売するかどうかは市場の反応次第。ロードマップはよく変わるものだからね(笑)。
――最後にあらためて、「ダヴィンチ Jr. 1.0」をどんな方に購入してもらいたいか。
シェン氏 お子さんのいるご家庭であれば、一緒に工作を楽しむための道具として、ダヴィンチ Jr. 1.0の購入を考えてみてほしい。日本でも、今後ますます教育現場で3Dプリンタの導入が進み、3Dプリンタを活用したモノづくりの授業も増えていくと考えられる。親子でモノづくりを楽しむのはもちろんのこと、学校で学んだことの復習や応用学習にも最適だ。お子さんにゲーム機を買い与えるよりも教育性が高いのは確実だ。
以上、シェン氏はXYZprintingの“顔”として、ダヴィンチ Jr. 1.0についてだけでなく、今後の製品展開や3Dプリンタ以外の取り組みについても気さくに話してくれた。個人的には3Dモデリングのハードルを取り払う3Dスキャナの登場が楽しみでならない。2015年も引き続き、同社の快進撃は続きそうだ。
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