3Dプリンティング技術で生活を豊かに――パーソナル3Dプリンタ市場に攻勢をかけるXYZprinting3Dプリンタの可能性を探る(6)(1/3 ページ)

パーソナル3Dプリンタ「ダヴィンチシリーズ」などを手掛ける台湾XYZprinting。新製品を立て続けにリリースした2014年に引き続き、2015年も製品ラインアップを拡充していくという。同社日本法人であるXYZプリンティングジャパン マーケティング部 マネージャーの新井原慶一郎氏に、今後の製品戦略やフードプリンタの取り組みなどについて伺った。

» 2015年03月09日 10時00分 公開
[八木沢篤,MONOist]

 昨今の3Dプリンタブーム、特に個人用途向けの「パーソナル3Dプリンタ」の普及において、製品の市場投入スピード、そして他を圧倒する価格競争力でその存在感を示しているのが、台湾New Kinpo Group傘下のXYZprintingだ。

 同社は2013年に設立(本社:台湾)され、米国、欧州、日本、中国などのグローバル市場に対し、パーソナル3Dプリンタ製品を展開。2014年3月に販売を開始したシングルヘッドの熱溶解樹脂積層法(FDM)方式3Dプリンタ「ダヴィンチ 1.0」は販売価格(税込)6万9800円(注1)と、当時低価格なものでも10万円前後が主流だったFDM方式のパーソナル3Dプリンタ市場に対し、大きなインパクトを与えた(関連記事:低価格3Dプリンタの本命登場か!? ――誰でも自宅プリントを実現「ダヴィンチ 1.0」)。

注1:ダヴィンチ 1.0の現在の販売価格(税込)は6万4800円で、PLA樹脂にも対応した後継機種「ダヴィンチ 1.0A」が登場している。



 同社はダヴィンチ 1.0のリリースを皮切りに、2014年の1年間で、デュアルヘッドの「ダヴィンチ 2.0 Duo」、3Dスキャン機能を搭載した「ダヴィンチ 1.0 AiO」の販売を開始。さらに、ダヴィンチ 1.0の後継機種で、新たにPLA(ポリ乳酸)樹脂をサポートした「ダヴィンチ 1.0A」を早くもリリースしている。

 そして、この勢いは2015年も変わらず、1月下旬にはダヴィンチ2.0 Duoの後継機種「ダヴィンチ 2.0A Duo」を販売し、3月上旬には同社初となる光造形(SLA)方式の3Dプリンタ「ノーベル 1.0」の販売を控えている。特にノーベル 1.0はダヴィンチシリーズと同様、価格インパクトが大きく、通常40万〜60万円するといわれている光造形方式の3Dプリンタよりも大幅に価格を抑え、何と22万9800円(税込)で提供するという。

 さらに同社は、「2015 International CES」において、ダヴィンチシリーズをより小型化した製品「ダヴィンチ Jr.」やフードプリンタなどを展示して注目を集めた。

 3Dプリンタ市場に攻勢をかけるXYZprintingとはどのような企業なのか? 今回、XYZprintingの日本法人XYZプリンティングジャパンのマーケティング部 マネージャーを務める新井原慶一郎氏に、同社のこれまでの歩みと今後の製品戦略などについて伺った。また、テレビ番組などでも取り上げられて話題となったフードプリンタについても聞くことができた。

新井原慶一郎氏 XYZプリンティングジャパン マーケティング部 マネージャーの新井原慶一郎氏

低価格な光造形方式3Dプリンタからフードプリンタまでめじろ押し!

――2014年は製品ラインアップを拡充し、パーソナル3Dプリンタ市場に攻勢をかけてきたが、どの程度のシェアを獲得できたと考えているか。

新井原氏 米国調査会社のGartnerによれば、2014年の世界市場における3Dプリンタの出荷台数は10万8000台。そのうちFDM方式のものは9万9000台だといわれている。われわれが2014年3月に製品展開を始めてからの9カ月ほどで出荷したダヴィンチシリーズの台数がワールドワイドで約3万台。つまり、FDM方式の3Dプリンタ市場の約30%をわれわれの製品で占めていることになる。出荷台数を地域別に見てみると、米国、欧州、日本、その他の順で伸ばしており、特に米国、欧州での販売が多い。

 さらにGartnerは、2015年の3Dプリンタ出荷台数を20万台と予測している。2014年の実績からFDMの比率が仮に全体の90%程度あるとしたら、約18万台がFDM方式になるのではないか。これを踏まえると、市場の成長スピードはおそろしく早いといえる。

 このように市場が急成長し、競争が激しくなっていく中でも、XYZprintingは「使いやすく」「使い続けられる」製品を顧客に提供したい。その中には、当然質の高いサポートも含まれる。われわれの製品は低価格であるため、「コストを抑えるために、品質や技術を削っているのではないか?」と思われるかもしれないが、そんなことはない。低価格化は、New Kinpo Groupの強みにより実現している。調達力、設計・開発力、そして自社工場での製造というEMS/ODMのノウハウや経験が、他社にはまねできない価格競争力を生み出している。

 われわれが掲げる、2016年までの3Dプリンタ製品の目標販売台数は100万台だ。その大きな目標に向け、2014年の約1年間、製品ラインアップを拡充してきたが、まだまだやるべきことがたくさんある。

――では、2015年の製品展開について教えてほしい。

新井原氏 2015 International CESでは、今後展開予定の新たな3Dプリンタ製品として、2015年3月上旬に販売を開始するノーベル 1.0と、話題を集めたフードプリンタ、そしてダヴィンチをさらに小型化したダヴィンチ Jr.の展示デモを行った。直近の展開でいうと、ノーベル 1.0を販売した後に、ダヴィンチ Jr.について何らかの発表ができると思う。

ダヴィンチJr 2015 International CESで披露された「ダヴィンチ Jr.」(出典:XYZprinting)

新井原氏 ダヴィンチ Jr.の展開も始まる予定だが、ダヴィンチ Jr.がダヴィンチシリーズそのものにとって代わる製品ではない。ダヴィンチシリーズは、当社の主力製品の1つとして今後もアップグレードを続けていく方針だ。

 一方、フードプリンタに関しては、2015年中の発表を予定しているが、詳細な時期については未定である。

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