オフィスとモノづくりの未来に向けてイトーキ中央研究所が5つの研究テーマを推進3Dプリンタの可能性を探る(1/3 ページ)

イトーキは、同社の研究機関であるイトーキ中央研究所が掲げる「10年後のオフィスとモノづくりに関するビジョン」と、その取り組みを具現化した次世代オフィス家具のプロトタイプ第1弾を披露した。

» 2024年10月01日 09時00分 公開
[八木沢篤MONOist]

 イトーキは2024年9月26日、東京・日本橋にある本社 兼 ショールーム「ITOKI TOKYO XORK」において記者説明会を開催し、同社の研究機関であるイトーキ中央研究所が目指す「10年後のオフィスとモノづくりに関するビジョン」と、その取り組みを具現化した次世代オフィス家具のプロトタイプ第1弾を披露した。

 イトーキ中央研究所は、オフィスとオフィス家具づくりにおける今後訪れるであろう課題に長期的視点で取り組むため、2023年1月に設立された組織だ。空間デザイン、プロダクトデザイン、開発設計、樹脂材料、3D CADなどの専門人材が所属しており、10年後の働き方を見据えたオフィスとオフィス家具の在り方、素材、設計手法、生産技術に関するリサーチを担っている。

イトーキ中央研究所の5つの研究テーマと長期ビジョン

イトーキ執行役員 中央研究所 所長の清水俊也氏 イトーキ執行役員 中央研究所 所長の清水俊也氏

 冒頭、同社 執行役員 中央研究所 所長の清水俊也氏は、オフィスとオフィス家具を取り巻く現状について、(1)オフィスの変化が常態化している(その分、経営的な負担も増えている)こと、(2)オフィス家具の製造でも多品種少量化の流れが来ていること、(3)メーカーとしてプラスチックごみ問題に対するアクションが求められていることを挙げ、「こうした背景を踏まえて、イトーキ中央研究所で取り組む5つの研究テーマを設定した」(清水氏)と述べる。

 5つの研究テーマとは「1.流動的オフィス」「2.プラスチックリサイクル」「3.パラメトリックデザイン」「4.アディティブマニュファクチャリング」「5.使用状態可視化」である。

 「1.流動的オフィス」とは、オフィスが人にあわせてフレキシブルに変化できるオフィスづくりの手法の探求を意味する。「2.プラスチックリサイクル」では、オフィス家具で多く使用されているプラスチックについて、ポストコンシューマーリサイクル/独自のマテリアルリサイクル手法の確立を目指す。「3.パラメトリックデザイン」では、ジェネレーティブデザインなどを活用し、これまでにない斬新なデザインや構造をコンピュータによって導き出すアプローチを探求する。「4.アディティブマニュファクチャリング」では、材料押出方式3Dプリンタによる造形手法をオフィス家具づくりに応用する取り組みを推進する。「5.使用状態可視化」では、循環型のユーザー体験の創出を目的にIoT(モノのインターネット)技術を駆使したオフィス家具の使用状態の可視化に取り組んでいく。

5つの研究テーマについて 図1 5つの研究テーマについて[クリックで拡大] 出所:イトーキ

 「オフィスは今よりももっと小刻みに変化するようになる。また、メーカーとしてこれ以上プラスチックごみになってしまうような製品は作るべきではない。オフィス家具としてはさらに品種が増えていくことが予想されるが、1機種当たりの出荷量は減少して金型投資に見合わない製品が増えていくことが考えられる。こうした変化に対応すべく、コンピュータによるデザインや3Dプリンタによる積層造形を取り入れて、われわれのコア技術をさらにバージョンアップする必要がある。そして、新しい循環モデルの実現を補う意味で、使用状態を可視化してリサイクルできるモノづくりに転換していくことにも取り組んでいかなければならない」(清水氏)

 イトーキ中央研究所では、一見するとバラバラなこれら5つの研究テーマをオフィスとオフィス家具づくりの文脈で1つのビジョンに紡ぎ出し、長期ビジョン「CENTRAL Lab.の世界線」として展開していく。

目指すべき循環モデルのイメージ 図2 目指すべき循環モデルのイメージ[クリックで拡大] 出所:イトーキ
5つの研究テーマを1つにつなぎ長期ビジョン「CENTRAL Lab.の世界線」として展開していく 図3 5つの研究テーマを1つにつなぎ長期ビジョン「CENTRAL Lab.の世界線」として展開していく[クリックで拡大] 出所:イトーキ

 そして、このビジョンを実現するために、1年半ほど前から慶應義塾大学KGRI 環デザイン&デジタル マニュファクチャリング創造センターとの共創(共同研究)を推進。同センターの拠点である「リサイクリエーション慶應鎌倉ラボ」に設置されている材料押出式の大型3Dプリンタなどを活用し、次世代オフィス家具のプロトタイプモデル第1弾として、流動的オフィス向けワークテーブルを製作した。

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