オフィスとモノづくりの未来に向けてイトーキ中央研究所が5つの研究テーマを推進:3Dプリンタの可能性を探る(3/3 ページ)
慶應義塾大学 政策・メディア研究科(SFC)特任講師の湯浅亮平氏
今回、イトーキ中央研究所との共同研究に尽力した慶應義塾大学 政策・メディア研究科(SFC)特任講師の湯浅亮平氏は「われわれのような3D技術者/研究者の立場からすると、オフィス家具づくりで用いられる既存の工法や素材との組み合わせを前提に、新しいモノづくりの方向性を試行できたことがとても新鮮だった。近年、3Dプリンタを採用した家具も増えているが、その多くが3Dプリント技術をいかに使うか/いかに魅せるかをアピールすることに主眼が置かれているように思う。これに対し、このプロジェクトでは本当に良いオフィス家具を作ることを目指し、イトーキの明確なコンセプトの下、3D技術者だけでは到達できないような取り組みに挑戦できた。これを第1弾とし、今後もさまざまなプロダクトの製作をともに進めていきたい」と述べている。
慶應義塾大学KGRI 環デザイン&デジタル マニュファクチャリング創造センター センター長 環境情報学部 教授の田中浩也氏
さらに、慶應義塾大学KGRI 環デザイン&デジタル マニュファクチャリング創造センター センター長 環境情報学部 教授の田中浩也氏は「3Dプリンタの研究に取り組んで18年ほどになるが、私の経験の中でも最もミニマムでシンプルなもの(プロトタイプモデル)が出来上がったと感じている。3Dプリンタで作ったように見えないところに、『いよいよ3Dプリンタ研究もここまできたか』という感慨深さがある。一見すると3Dプリンタがどこに使われているのか分からないし、あえてそれを強調する必要もないものだが、実は非常に高度な技術がたくさん使われている。それらが謙虚に、自慢せず、職人技的にきちんと1つに統合されている点が日本のモノづくりらしさでもあり、非常に誇らしく感じる。3Dプリンタ研究の中でも机(テーブル)を題材にしたものは世界的にも例がほとんどなく、家具メーカーとのコラボレーションは非常に学びの多いプロジェクトとなった」と、本プロジェクトの手応えを語っている。
写真左から、慶應義塾大学 政策・メディア研究科(SFC)特任講師の湯浅亮平氏、慶應義塾大学KGRI 環デザイン&デジタル マニュファクチャリング創造センター センター長 環境情報学部 教授の田中浩也氏、イトーキ執行役員 中央研究所 所長の清水俊也氏、イトーキ 中央研究所 工藤芙弥氏[クリックで拡大]
その他、使用状態可視化の実現イメージも紹介した。完成した流動的オフィス向けワークテーブルのプロトタイプモデルの天板裏面に圧力センサーモジュールを設置し、天板にかかる圧力を常時計測してクラウドにデータを送信、可視化するというもので、交換や再生時期をユーザーに提示することを狙っている。
使用状態可視化を実現するためにテーブルフレーム部の内側に設置された圧力センサーモジュール[クリックで拡大]
また、今回はワークテーブルのプロトタイプモデルをメインに紹介していたが、単一素材で、コンピュータによるデザインを活用したチェアなどの開発も進めているとのことだ。
ワークテーブルだけでなく、チェアのプロトタイプモデルなどの開発も進めている[クリックで拡大]
⇒ 「3Dプリンタの可能性を探る」のバックナンバーはこちら
- 実物を作る前に現実空間でデザインを検討/評価、MRを積極活用するイトーキ
テクノロジーとデザインの融合による価値創出に取り組むオフィス家具メーカーのイトーキは、製品開発のデザイン検討でMR技術を積極的に活用している。
- 国産巨大3Dプリンタとリサイクルシステムを一体化、「鎌倉発」の最先端ラボ公開
慶應義塾大学SFC研究所 環デザイン&デジタルマニュファクチャリング共創ラボは、科学技術振興機構の「共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)」において、地域共創分野育成型プロジェクトとして採択された「デジタル駆動超資源循環参加型社会共創拠点」の地域研究活動サテライト拠点として開設する「リサイクリエーション 慶應鎌倉ラボ」の内覧会を開催した。
- 日本における“循環型まちづくり”の姿を移動型施設や循環車などの展示で訴求
リスペクトでつながる「共生アップサイクル社会」共創拠点 アップサイクル都市モデル分科会は、駐日オランダ王国大使館で「日蘭アップサイクル建築・まちづくり展」(会期:2024年3月5〜6日)を開催した。分科会の活動内容の紹介や“循環型まちづくり”に関する各種展示が行われた。
- 回収した使用済みプラスチックボトルからオフィス用チェアを共同開発
イトーキは、ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティングによる取り組みで回収した使用済みプラスチックボトルを活用して、オフィス用チェア「UMILEチェア」を共同開発した。このチェアを、リニューアルした同社本社オフィスに納入した。
- 3Dプリンタだから実現できた東京五輪表彰台プロジェクトとその先【前編】
本来ゴミとして捨てられてしまう洗剤容器などの使用済みプラスチックを材料に、3Dプリンティング技術によって新たな命が吹き込まれた東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(東京2020大会)表彰台。その製作プロジェクトの成功を支えた慶應義塾大学 環境情報学部 教授の田中浩也氏と、特任助教の湯浅亮平氏に表彰台製作の舞台裏と、その先に目指すものについて話を聞いた。
- 3Dプリンタだから実現できた東京五輪表彰台プロジェクトとその先【後編】
本来ゴミとして捨てられてしまう洗剤容器などの使用済みプラスチックを材料に、3Dプリンティング技術によって新たな命が吹き込まれた東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(東京2020大会)表彰台。その製作プロジェクトの成功を支えた慶應義塾大学 環境情報学部 教授の田中浩也氏と、特任助教の湯浅亮平氏に表彰台製作の舞台裏と、その先に目指すものについて話を聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.