東京大学の富田泰輔教授らの研究グループは、アルツハイマー病にかかわる酵素であるγセクレターゼが基質をつかまえる、「箸」のような分子機構を明らかにした。
東京大学は2015年2月20日、同大大学院薬学系研究科の富田泰輔教授、高木(新留)穏香元大学院生、佐々木朝輝元大学院生らの研究グループが、γセクレターゼが基質をつかまえる、「箸」のような分子機構を明らかにしたと発表した。
アルツハイマー病は、凝集性の高いアミロイドβタンパク質(Aβ)が脳に老人斑として沈着するのをきっかけに発症すると考えられている。しかし、Aβを産生する酵素のγセクレターゼは、他のタンパク質も切断する働きを持つため、単純に阻害するだけでは、副作用を引き起こすという。また、γセクレターゼは、タンパク質(基質)の膜貫通領域を加水分解する膜内配列切断酵素でもあるが、どのように基質を認識しているかは不明とされていた。
今回、同研究グループでは、γセクレターゼが膜内に存在する基質をつかまえる分子機構を明らかにした。γセクレターゼの活性中心のサブユニットであるプレセニリンの細胞外に面している第1ループ領域とカルボキシ末端が、箸のように協調的に基質の細胞外領域をつかまえ、活性中心の構造に取り込んでいることを明らかにした。同研究成果により、γセクレターゼが基質の膜内配列を切断する際に、基質をつかまえる分子領域を世界で初めて同定したことになるという。
同成果は、特定の基質のみを切断し、Aβ産生のみを抑制する、副作用のないアルツハイマー病の治療薬開発につながることが期待できるという。
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