大阪大学は、精子が子宮から卵管へ移行し、卵を覆う卵透明帯に結合する際、精子タンパク質GALNTL5がその最終段階を担うことを発見した。精子膜タンパク質ADAM3の依存的、非依存的な2つの経路で、GALNTL5が必要とされることが分かった。
大阪大学は2025年9月16日、精子が子宮から卵管へ移行し、卵を覆う卵透明帯に結合する際、精子タンパク質GALNTL5がその最終段階を担うことを発見したと発表した。熊本大学、ベイラー医科大学との共同研究による成果だ。
体内に射出された精子は、子宮と卵管の接合部(UTJ)を通過して、卵管膨大部で卵と出会って受精する。研究では、精巣で強く発現する糖転移酵素様遺伝子Galntl5を欠損した(Galntl5 KO)雄マウスを作成。Galntl5 KO雄マウスの精子は、形態や運動性が正常でもUTJに結合せず、卵管へと移行できないため、ほぼ不妊となった。
また、精子のUTJ通過や卵透明帯結合には、精子膜タンパク質ADAM3依存的、ADAM3非依存的な経路が存在すると考えられている。そのため、Galntl5 KO精子のUTJ関連因子を調べたところ、正常な精子と大きな違いはなかった。一方で、ADAM3を欠損した精子では、GALNTL5がほぼ消失していた。このことから、GALNTL5が両経路で必要とされる、最下流因子として機能することが示された。
UTJの上皮細胞や卵透明帯の表面に存在するGalNAc(阻害糖)修飾タンパク質をブロックしたところ、UTJや卵透明帯に結合する精子数が減少した。この結果から、GALNTL5がGalNAcと相互作用することで、精子はUTJの結合、通過、卵透明帯に結合できることが分かった。
今回の研究成果により、体内での受精に至る共通機構の一端が明らかとなった。男性不妊の分子診断ターゲットや、UTJでの結合を阻害する避妊薬開発への応用が期待される。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
コーナーリンク