精子の受精能獲得に重要なタンパク質を解明医療技術ニュース

大阪大学は、精子の受精能獲得には、タンパク質のFER1L5が重要であることを明らかにした。FER1L5を欠損したマウスの精子は、卵子に到達しても先体反応が起こらず、受精できない。

» 2023年02月21日 15時00分 公開
[MONOist]

 大阪大学は2023年1月26日、精子の受精能獲得には、タンパク質のFER1L5が重要であることを発表した。FER1L5を欠損したマウスの精子は、卵子に到達しても先体反応が起こらず、受精できないことが明らかとなった。

キャプション 雌の生殖路内の卵子に到達した精子(赤色)と先体(緑色)[クリックで拡大] 出所:大阪大学

 ヒトやマウスの精子は、射出された直後は生殖能力がない。雌の生殖路を移行中に先体反応を起こし、精子頭部の先体内に含まれる酵素などを放出することで、卵子と受精できるようになる。

キャプション 精子の変化。線虫精子は活性化し、アメーバ運動を示す。マウス精子は先体反応を起こし、卵子との融合に必須な分子が露出する 出所:大阪大学

 研究チームは、線虫の受精に必須となるタンパク質FER-1に着目。マウスに存在するFER-1類似タンパク質6種類のうち、機能未知のFER1L4、FER1L5、FER1L6について遺伝子を調べたところ、3種類とも精巣で発現していた。

 そこで、それぞれの遺伝子を欠損させたマウスを作製。その結果、FER1L5のみが生殖能力に重要であることが分かった。FER1L5を欠損したマウスの精子は、形態や運動性に異常は見られなかったが、先体反応を誘起しても先体反応が起こらず、先体は残ったままだった。

キャプション 精子頭部の電子顕微鏡観察。FER1L5欠損の精子では、強力な先体反応誘起剤を添加しても先体反応が起こらず、先体が残ったままである 出所:大阪大学

 FER1L5は、ヒトの精子にも存在する。不妊の約半数は男性に起因すると言われ、今回の成果が男性不妊の検査、診断法の確立、治療法の開発につながることが期待される。

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