名古屋大学と東京大学は、細胞外小胞の捕捉と細胞外小胞の膜タンパク質の検出を同時に行う解析プラットフォームを開発し、尿中細胞外小胞が脳腫瘍診断のバイオマーカーとして利用可能であることを明らかにした。
名古屋大学は2023年1月20日、細胞外小胞の捕捉と細胞外小胞の膜タンパク質の検出を同時に行う新しい解析プラットフォームを開発したと発表した。同プラットフォームを用いて尿10滴から捕捉した細胞外小胞の膜タンパク質の発現量が、脳腫瘍診断の新しいバイオマーカーとして利用可能であることを明らかにした。東京大学との共同研究による成果だ。
開発したプラットフォームは、尿中の細胞外小胞を効率良く捕捉するために、ウェルプレートの底面にナノスケールの棒(ナノワイヤ)を作製している。1台で細胞外小胞の捕捉から膜タンパク質の検出ができるオールインワンプラットフォームだ。
脳腫瘍診断のバイオマーカーとして尿中細胞外小胞を利用できるかを確認するために、脳腫瘍患者の腫瘍組織(オルガノイド)と脳腫瘍患者の尿を用いて、同プラットフォームで細胞外小胞の膜タンパク質を解析した。
その結果、オルガノイドを形成する細胞と形成しない細胞の培養液および脳腫瘍患者と非患者の尿では、それぞれ膜タンパク質の発現量が異なり、脳腫瘍細胞が放出する特徴的な細胞外小胞が尿中に存在することが示唆された。
脳腫瘍は、神経症状が発現して初めて発見されることが多い。発見時には、手術で腫瘍を完全に取り除けないほど進行していることがある。血液や尿に含まれる細胞外小胞は、がんバイオマーカーなどへの活用が期待されている。尿は非侵襲的に採取できるものの、従来法では尿から多くの細胞外小胞を集められなかった。
今回の研究結果から、尿中の細胞外小胞が脳腫瘍のバイオマーカーとなり得る可能性が示された。他のがんについても、同プラットフォームを用いて膜タンパク質の発現量比を解析することで、早期発見できる可能性がある。
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