LIDARは航法用のセンサーであるが、科学観測機器としての役割も持っている。初号機では、イトカワの地形データを作成した他、重力の計測にも利用された。
「はやぶさ2」ではこれに加え、アルベドの測定も行う計画だ。前述のように、LIDARは受信光と送信光のタイミングだけ検出できれば距離が分かるのだが、光量まで正確にモニターしておけば、小惑星表面の反射率の分布も知ることができる。これは、表面物質の組成など、さまざまな科学情報を知るのに非常に役立つ(「はやぶさ2」では、国立天文台の並木則行教授を中心としたLIDARサイエンスチームが科学観測を計画している)。
また、初号機のサンプルキャッチャーの中から、多数の微粒子が見つかったということもあって、イトカワの表面付近では、微粒子が雲のように漂っていたのでは、という説も出ている。そこで、「はやぶさ2」ではこれを調べるための「ダストカウント」機能を追加した。1999JU3の表面で、一定量以上の微粒子が浮遊していれば、レーザーの微弱な反射があるはずだ。ダストカウント機能では、この検出を狙う。
上記は科学目的の新機能であるが、工学実験として検討されているのが「スペースレーザーレンジング」だ。通常、地球から探査機までの距離を調べるのには、電波が使われている。往復に要する時間を計測するというのはLIDARと同じ原理だが、電波の代わりにレーザーを使えば、計測精度を向上させることができる。
レーザーが届く範囲でしか使えないという欠点もあるものの、0.2AU(約3000万km)程度の遠距離でも利用できる可能性があるという。ただ、「はやぶさ2」はサンプルリターン機であり、その主目的の邪魔になるようなことはできない。地球に接近するのは、出発時、スイングバイ時、帰還時しかなく、実験を行う機会があるかどうかは、水野准教授にも分からないそうだ。
大塚 実(おおつか みのる)
PC・ロボット・宇宙開発などを得意分野とするテクニカルライター。電力会社系システムエンジニアの後、編集者を経てフリーに。最近の主な仕事は「日の丸ロケット進化論」(マイナビ)、「3Dプリンタ デスクトップが工房になる」(インプレスジャパン)、「人工衛星の“なぜ”を科学する」(アーク出版)、「小惑星探査機「はやぶさ」の超技術」(講談社ブルーバックス)など。宇宙作家クラブに所属。
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