小惑星探査機「はやぶさ2」が2019年7月11日、2回目のタッチダウンに成功した。60cmの着陸精度を実現するなど、ほぼ完璧な運用となった第2回タッチダウンの全貌について、はやぶさ2の取材を続けてきた大塚実氏が解説する。
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小惑星探査機「はやぶさ2」が2019年7月11日、2回目のタッチダウンに成功した。その着陸精度は、なんと60cm。1回目の精度1mにも驚いたが、今回さらに上回ったことで、これが「偶然」ではなく、「実力」であることを示した。探査機内部には、2回分のサンプルが格納されていると考えられ、科学的成果への期待が大きく高まった。
「既に1回成功していたんだから、2回目も成功して当然」と思っている人もいるかもしれないが、話はそう簡単ではなかった。今回、大きな問題となっていたのは、着陸に不可欠な光学センサーの汚れ。第1回タッチダウンのときに舞い上がった砂塵(じん)が付着してしまい、受光量が半分程度にまで低下していたのだ。
この問題をどう解決して、ほぼ完璧といえるタッチダウンを実現したのか。今回はその点に注目してみたい。なお1回目のタッチダウンについては過去記事があるので、そちらも参照してほしい※1)。
※1)関連記事:「はやぶさ2」は舞い降りた、3億km彼方の星に、わずか1mの誤差で。
第2回タッチダウンについて述べる前に、まずはそれに先だって、2019年4月5日に実施された「インパクタ」(衝突装置:SCI)の運用について触れておきたい。
インパクタは、人工クレーターを作るために、はやぶさ2で新規開発された装置である。小惑星の表面は、宇宙風化によって変質していることが予想されているが、重さ2kgの純銅製の「衝突体」を秒速2kmで撃ち出し、その衝撃で地下物質を露出させれば、宇宙風化前の“フレッシュ”な物質の採取が可能となる。
はやぶさ2は既に、1回目のタッチダウンにおいて、表面物質の採取に成功している。2回目のタッチダウンで地下物質も採取できれば、両者を比較できるようになる。違いがあれば、宇宙風化の過程が分かるし、違いがあまり無ければ、小惑星表面は予想以上にかき混ぜられていることが分かる。いずれにしても、得られる科学的成果は大きい。
このインパクタに関しては本連載で紹介している。ハードウェア構成や運用計画について、詳しくはそちらを参照してもらうとして、本稿では実際の運用結果について紹介することとしたい※2、3)。
※2)関連記事:小惑星に人工クレーターを作れ! 〜インパクタの役割と仕組み【前編】〜
※3)関連記事:爆発までの40分間で小惑星の裏側に退避せよ! 〜インパクタの役割と仕組み【後編】〜
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