2014年12月に打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ2」に搭載された、ローバー(探査車)が「ミネルバ2」だ。小惑星に降り立つ重要なミッションを持ったミネルバ2の全貌に迫る。
小惑星探査機「はやぶさ2」に搭載されたローバー(探査車)が「ミネルバ2(MINERVA-II)」である。小惑星「リュウグウ」(1999 JU3)の近くで母船(はやぶさ2本体)から切り離され、表面に投下。地表に到達してから、自分で移動しながら、天体表面の様子を詳しく観察する。
はやぶさ2自身も小惑星近傍では遠隔観測を行うものの、安全のため、どうしても一定の距離が必要になる。しかし近くでないと得られないデータもあって、そこで活躍するのがローバーである。天体への接近は非常にリスクが高い行為だが、ローバーを使えば、母船へのリスクを回避することができる。
ミネルバ2を開発したのは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)/宇宙科学研究所(ISAS)の吉光徹雄准教授。吉光准教授は、「はやぶさ」初号機に搭載されたローバー「ミネルバ」(以下、初代ミネルバ)の開発者でもある。ミネルバ2はどう変わったのか、吉光准教授に話を聞いた。
初代ミネルバは、残念ながら小惑星表面に降り立つことができなかった。
2005年11月12日、1回目のタッチダウンに先立って行われた降下リハーサルにおいて、初代ミネルバは母船から分離された。このとき、本来は下降中に放出すべきだったのだが、上昇中のタイミングで放出が実行。小惑星イトカワの引力の弱さもあり、ミネルバはイトカワへ接近することができず、着陸に失敗してしまった。
この失敗は、ミネルバの放出を地球からの遠隔操作でやろうとしたことが原因だった。はやぶさには、小惑星までの距離を計測できるレーザー高度計(LIDAR)が搭載されているので、本来であれば、この計測値をチェックしながら自動で放出するようにしておけば、上昇中に放出するようなミスは防げたはずだ。
しかし問題は、LIDARの値が信用できるのかどうか、この時点では、まだ分からなかったことだ。LIDARはイトカワに到着するまでの宇宙空間では、基本的に使う機会が無い。
リハーサルで動作を確認した後であれば、計測値を信用できるようになるだろうが、この時はリハーサルの前。この段階では、まだ完全に信用するわけにはいかなかった。
そこで、地上からコマンドを送り、手動で放出することになった。ところが、電波がイトカワまで往復するのには、約30分もの時間がかかってしまう。30分後の母船の位置と速度を見越してタイミングを図る必要があり、これはこれで難易度が高い。結局、スラスターを噴射して上昇を始めた後に分離コマンドが届いてしまい、失敗してしまった。
ミネルバ2にも推進系は無いので、対策は基本的に、自動でしっかり降下中に分離してもらうことしかない。1つ初号機よりも有利なのは、小惑星への滞在期間が1年半と長いことだ。運用に余裕があり、リハーサルやタッチダウンなど、初号機よりは降下する機会も多いはずだ。無理に1回目で頑張る必要は無いだろう。
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