そう、僕だって、進歩してなかったわけじゃないんですっ! 甚さんに「実務ができない院卒」呼ばわりされ! 殴られて! 叱られて! 泣いて! 悩んで! 学習して! 失敗して! とにかく、前に進んできたのです!!
確かに、そうだなぁ。うーん、オイラもいろいろ言い過ぎてきたかな、悪かった。そんじぁ、久々にホッピーでもいくかぁ、あん? 後は飲みながら話そうじゃねぇかい。
いいですね! 僕も飲みたい気分です。あっ、エリカちゃんも呼んじゃいましょうか?
ひとまず2人は製作所の事務所を出て、近所の行きつけの居酒屋に向かいました。先に飲みながら、エリカちゃんの到着を待つことにしました。
エリカちゃん、「甚さんシリーズ」の会話に初登場……、ですが、今回は事情により顔を伏せています。
国木田さんは、ちゃんと頑張ってますか?
おうっ、よく頑張ってるよ。よくずっこけるけどなぁ。
ずっこける……。もっとほめてください! ぜひ! この場で!
ところでエリカちゃんは、どうしていまだにアシスタントなのか? 良君以上に設計ができるとオイラは思うんだが。
ギクーリ。え、えっと、それは……。
どうなんですか……(ジロッ)。
さあさあ! ここでオメェたちに、溶接の“プロの極意”を伝授してやらぁ。
図5で、スポット溶接とアーク溶接の特徴や、溶接の得手不得手について説明しました。溶接部にはさびやすいので要注意です。何度も掲載したいほど、重要な知識です。さらに、溶接して作る板金箱の設計法も紹介しておきます(図6)。
これぐらいなら、酒飲みながらでも理解できるだろ?
板金の溶接設計は、こうやってやるんですね! そうだ、うちの会社では、工場見学会をやっているんですが、はっきり言って、工場見学しただけでは溶接のこともよく分からなかったし、設計もできませんでした。仲間は「社会科見学」って言っていました。
うーん、私も1度だけ行ったけど、確かに、現場の雰囲気味わえただけでしたね。
現場を見学するのはよいことだぜぃ。でも、まずは加工法の勉強をしてからだ! そうでないと、オメェたちの言うように、まるで小学生の「社会科見学」になっちまうぜぃ。オメェんとこの課長にも、そう言っておけ!
はいっ! 僕から厳しく言っておきますっ!!(キリッ)
たのもしいです!
そう言っておきながら、おじけづくんじゃねぇぞ。
……エリカちゃんの顔は、次回公開します。
それでは、最後に板金のプロが設計したVTRシャーシの例(図7)を見てみましょう。切り起しを駆使した見事な作品です。
このように、板金設計は切り起しを使うだけでプロになれるのです。(次回に続く)。
國井 良昌(くにい よしまさ)
技術士(機械部門:機械設計/設計工学)。日本技術士会 機械部会、埼玉県技術士。横浜国立大学 大学院工学研究院 非常勤講師。首都大学東京 大学院理工学研究科 非常勤講師。
1978年、横浜国立大学 工学部 機械工学科卒業。日立および、富士ゼロックスの高速レーザプリンタの設計に従事。富士ゼロックスでは、設計プロセス改革や設計審査長も務めた。1999年より、國井技術士設計事務所として、設計コンサルタント、セミナー講師、大学非常勤講師としても活躍中。「ついてきなぁ!加工知識と設計見積り力で『即戦力』」(日刊工業新聞社)と「ついてきなぁ! 『設計書ワザ』で勝負する技術者となれ!」(日刊工業新聞社)をはじめとする多数の書籍を執筆。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.