社内に設計者がいないスタートアップや部品メーカーなどがオリジナル製品の製品化を目指す際、ODM(設計製造委託)を行うケースがみられる。だが、製造業の仕組みを理解していないと、ODMを活用した製品化はうまくいかない。連載「ODMを活用した製品化で失敗しないためには」では、ODMによる製品化のポイントを詳しく解説する。第6回のテーマは「製品仕様書の書き方」についてだ。
ODMメーカーが決まれば、次にどのような製品を作りたいかを伝えなければならない。そのためには製品仕様書を作成し、ODMメーカーに提出する必要があるが、この作成がなかなか難しい。例えば、テレビに慣れ親しんでいる人でも、「このテレビの仕様は何か」と聞かれて10項目以上挙げられる人はほとんどいないだろう。Webで「テレビ 仕様」と検索すれば、いろいろなメーカーのテレビの仕様一覧が出てくるが、とても多くの項目があるのが分かる。
ODMメーカーは、基本的に提示された製品仕様書にのっとって製品化の設計を進める。しかし、製品仕様書が満足に書かれていなければ、設計は進められない。筆者のスタートアップ支援の経験の中で、ODMメーカーが「一体、何を作りたいのですか?」と困り果てているのを何度か見てきた。
「こんな感じの製品を作りたいです」程度の情報だけでODMメーカーと契約を結んでも、その後、製品仕様が決まらないことには、ODMメーカーはいつまでたっても本格的な設計に進めない。これではコストと時間がどんどんと浪費されていく。そのような状況を避けるために、今回は「製品仕様書の書き方」について詳しく説明する。
製品化は「製品企画」を考えることからスタートする。連載「ベンチャーが越えられない製品化の5つのハードル」の第2回「何のために製品を市場に出しますか?」を参照してほしい。製品企画の中の「製品仕様」「販売価格」「日程」を詳細にしたものが設計構想である。これは、スタートアップの社内に設計者がいれば、設計者が作成する。
そして、その中の「製品仕様」をさらに詳細に書いたものが製品仕様書である。ODMを行う場合はこれが必要だ。なお、「販売価格」と「日程」はODMメーカーに契約書などで別途伝える場合が多いので、本連載では説明を省く。ODMメーカーには、製品化ビジネスの全体像である製品企画の中の「製品仕様」に関する部分の具現化を委託するのだ。
スタートアップはODMメーカーに製品仕様書を提出するが、それは製品仕様書(案)と考えるべきである。その理由は、冒頭で述べたように満足する内容を書くことが難しいからだ。そもそも、製品仕様書は技術的な内容が含まれるため、設計者でなければ書けない部分も多い。よって、製品仕様書の最終版はODMメーカーに作ってもらう。
まず、スタートアップが製品仕様書(案)を作り、次にそれを受け取ったODMメーカーが製品仕様書(最終)を作成し、最後にスタートアップがそれを承認するという手順がよい。
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