今回は、甚さんと一緒に板金部品の設計見積もりをしてみよう! 材料費、加工費、ロット倍率、プレスの型費など1つ1つ計算する。一見難しそうだが、やってみると結構簡単。
根川 甚八(ねがわ じんぱち)
根川製作所 代表取締役社長。団塊世代の大田区系オヤジ技術屋。通称、甚さん
国木田良太(くにきだ りょうた)
ADO製作所 PC事業部 設計2課 勤務。80年代生まれのイマドキな若者。機構設計者。通称、良君
*編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。
甚さん! 前回で学んだ三角リブの役割は理解できました。板金全体が、何となく格好良くなりますね。
おお、そうかい。あんがとよ。そんじゃー、良君、コストをはじけ!
こっ、コッ……こけこっこぉ! コストって何ですか? お値段ですか? ぼっ、僕が計算するんですか?
べらんめぇ! あんなぁ……。「コスト(Cost)」を和訳すると「値段」なのか? 逆に、「値段」を英訳してみろ! 「プライス(Price)」だろがぁ、あん? オメェは確か……。
えぇ、そうですとも。どーせ、「図面読めない、書けない院卒」「技術者の主要4科目であるQCDPaは、Qしか寄与していないCAE技術者」ですから。はいそうですよっ! フーンッ!
オメェなぁ。街の蕎麦(そば)屋、寿司(すし)屋、ラーメン屋、八百屋、クリーニング屋、それに大工やペンキ屋……、全員がコスト、つまり原価はじけねぇで、生きていけると思ってるんかぁ? あん?
「なんも言えねぇ〜!」
オメェ! それは北島が金メダルを取ったときの感激のせりふだろぁ〜! ふざけんなっ! 北島はなぁ〜、江戸下町のシーローだぜぃ! 言葉を慎めいっ!
良君、どうやら完敗のようです。
筆者は、世間一般の外部会計監査と同じような、外部設計審査を担っています。キチンと設計審査を実施している企業の技術者は、「QCDPa」をキチンと審査しています。
近年、「D」は「開発スピード」と訳すようになった。訳せなかった企業が今、衰退している。
「QCDPa」とは、「技術者の主要4科目」です。「Pa」を除けば、「技術者の主要3科目」です。これは、筆者がコンサルテーションで活用している用語です。
安全率は、Qの中で“当たり前”な項目です。なので、どこの企業でも、設計審査において必ず質問されます。ところが「率」であるが故に、ごまかしやすいのです。そのとき、安全率の「分母、分子」について質問しない設計審査員や上司は、かなりの「ド素人」と言っていいでしょう。
「設計審査の超定番『安全率』をごまかすな!」で、何度も復習しましょう。
おかげさまで、「安全率」については完璧にマスターしました。安全率のような学術的な分野は、得意中の得意です。テスト? いつでもOKですよ。なんか、一気にプロの設計者になれた気分ですなー。そう、僕は院卒! しかも首席で卒業っ!
あんなぁ〜っ! 「院卒。しかも首席で卒業」は止めとけって前回もゆっただろー! もしかして、オレサマを怒らせるために、わざとかい? オメェ最近、性格悪くなったぞ。「頑張れ、日本!」はどこいった? また、オールクリア(全消去)かぁ?
……。
さて今回注目の「C(コスト)」についてですが、上記のようにキチンと設計審査を実施している企業は、零細企業から大企業まで、事業規模にかかわらず、ほぼ全ての技術者は、コスト見積もりができます。
一方、その真逆の「設計審査を実施していない企業」の技術者は、ほぼ100%、コストが見積もれません。おまけに、上司は設計審査も検図もできません。良君と、彼の会社の課長と同じですね。
技術者にとっての設計審査とは、最強のOJT(オンザ・ジョブ・トレーニング)の場だったのです。
設計審査についても、復習しておきましょう。「甚さんの設計分析大特訓」で「設計審査とは何か」を復習してください。
うゎ〜っ! なつかしいなぁ。これも、僕は完全マスターしましたよ。会社の仲間は設計書を書かない、……いや、書けないのですが、僕は書いています! これも自己研さんですよ。いつかは転職しますから。
【良君の会社の悪しき現状】
良君には、社内の設計改革にチャレンジしてほしいものです。でも、転職も考えた方がよいかもしれません。大手電機メーカーから液晶パネルがなくなり、携帯電話がなくなり……という時代です。改革している間に、会社の存続が危うくなるかもしれません。
そんじゃ、良君! 英語同様に、まずは、コスト関連の単語を覚えろ。単語を知らねぇと、なんもできねぇシ。
コストや価格に関する簡易辞書を作っておきました。技術者必携です。
1.から14.の単語は、設計業務の中で何度も出てくる単語です。一般常識としても大いに役に立ちます。今すぐに、暗記しておきましょう。
*「ついてきなぁ! 加工部品設計の『儲かる見積り力』大作戦」(日刊工業新聞社刊)より。
これらの単語を知らないまま、「低コスト化会議」を開催してしまい、チンプンカンプンになっている企業人が多くいます。日本人技術者の弱点かもしれません。品質だけでは、世界で勝負できない時代です。
また、QCDPaの「D」は、「開発スピード」と訳す時代に変ぼうしています。この「C」と「D」の変ぼうを捉えていない日本の大企業が今、大量リストラなどで大きく揺れ動いていると、筆者は分析しています。
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