今度は、「ロット倍率」を求めます。……が、その前に、「量産効果」と「ロット数」という単語を理解しましょう。
そんな単語、学校では一切教わりませんでしたよ。
技術者という職人の世界では学問が重要だが、学歴は無用だ。だから、「富士山麓大学・大学院を首席で卒業!」ってせりふはもうやめろ! 実務は何も知らねぇって、自ら言っているようなもんだ。
「量産効果」は、よく耳にする単語ですね。簡単にいえば、スーパーなどで、1個のリンゴを買うよりも、1袋5個入りのリンゴの方が単価は安くなるというのと同じです。例えば、前者のリンゴが150円、後者は5個で500円というような場合です。
さて、その量産効果を図3で求めます。まず、ロット数を求めます。ロット数とは例えば「500個/月」という具合に「1カ月で500個」生産する場合や、部品メーカーに生産を注文するときに「一度の注文で500個製作する」という意味です。先ほどの例に戻れば、ロットとは、「1袋5個入り」の「1袋」に相当します。
図3に戻って、ロット10000個の場合のロット倍率を求めますと、「Log10000=4」ですから、グラフより「0.81」と読み取れます。つまり、ロット1000個の注文時は加工費を「1」とするとロット10000では約2割引の「0.81」となるのです。
従って、以下のようになります。
加工費=基準加工費×ロット倍率
=8×0.81=6.5指数(円)
あえて、ここで一度、まとめますね。ロット10000個における図1の部品に関して、材料費=21.6指数(円)、加工費=6.5指数(円)となりましたね。
最後は、「プレス型費」を算出するぞ。一般的な「単発型」でやってみようぜぃ!
図4の単発型の型費は、下方の2本です。板金部品の外側を打ち抜く場合の「せん断用」であり、もう1つのグラフは「せん断以外」、つまり、穴や曲げや三角リブなどの型費の線図です。
√(W×L)=56.5ですから、
⇒合計:230000指数(円)
従って、「1台当たりの型費=230000/10000=23指数(円)
図1の部品の「設計見積もり=材料費+加工費+1台」当たりの型費は、以下です。
=21.6+6.5+23
=51.1指数(円)
ここで一般論だがよぉ、「定価×1/3=原価(コスト)」の式がある。そうだ良君! DIY店で図1の部品の売値を調べてきたか?
ハイ、甚さん! 1個でなんと「448円」でした。
「51.1×3=153指数(円)」……ちょっともうけ過ぎじゃねぇかい。あん?
ちょっと、消費者には疑問の価格設定ではないでしょうか? とは思いますが、「中間業者が多く存在する」など、販売側にもいろいろ事情があるのでしょう。
それはさておき、コストを把握できないのは、先進工業国の中で、日本人技術者だけです!
技術者の主要4科目と主要3科目、すなわちQCDPaとQCDを強化するならいまのうちです。
日本企業衰退の理由は、「東日本大震災」「タイの洪水」「長引く円高」と企業のトップはいいますが、「他責ではなく自責で反省すべき」と、毎月、隣国の大企業のコンサルテーションを終えた飛行機の中で、筆者自らも反省しています……。
また、来月をお楽しみに!
國井 良昌(くにい よしまさ)
技術士(機械部門:機械設計/設計工学)。日本技術士会 機械部会、埼玉県技術士。横浜国立大学 大学院工学研究院 非常勤講師。首都大学東京 大学院理工学研究科 非常勤講師。
1978年、横浜国立大学 工学部 機械工学科卒業。日立および、富士ゼロックスの高速レーザプリンタの設計に従事。富士ゼロックスでは、設計プロセス改革や設計審査長も務めた。1999年より、國井技術士設計事務所として、設計コンサルタント、セミナー講師、大学非常勤講師としても活躍中。「ついてきなぁ!加工知識と設計見積り力で『即戦力』」(日刊工業新聞社)と「ついてきなぁ! 『設計書ワザ』で勝負する技術者となれ!」(日刊工業新聞社)をはじめとする多数の書籍を執筆。
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