現実と仮想の境界を超える負荷を下げる、ソニーグループの映像制作技術CES 2025

ソニーグループは、最先端テクノロジーの展示会である「CES 2025」で、長期ビジョン「Creative Entertainment Vision」をテーマとし、空間コンテンツ制作支援ソリューション「XYN」など、保有技術を組み合わせた映像制作支援技術を紹介した。

» 2025年01月20日 10時00分 公開
[三島一孝MONOist]

 ソニーグループは、最先端テクノロジーの展示会である「CES 2025」(2025年1月7〜10日、米国ネバダ州ラスベガス)で、長期ビジョン「Creative Entertainment Vision」をテーマとし、空間コンテンツ制作支援ソリューション「XYN(ジン)」など、保有技術を組み合わせた映像制作支援技術を紹介した。

リアルとバーチャルの境界負荷を下げる「XYN」

 ソニーグループでは、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。」をパーパスとし、ゲームや映画、音楽、アニメなどさまざまなコンテンツ展開と、テクノロジーによりそれを生み出すクリエイターのサポートを行っている。今回のCESでは、コンテンツの新たな展開を発表するとともに、これらを支える新たな技術を紹介した。

photo CES開幕前日のプレスデーでソニーグループのパーパスである「感動」を訴えたソニーグループ 社長 COO 兼 CFOの十時裕樹氏[クリックで拡大]

 新たに発表したソリューションの1つが、空間コンテンツ制作支援を行うソフトウェアとハードウェアが統合されたソリューション「XYN」だ。XYNは、これまでソニーグループで培ってきたイメージング、センシング、ディスプレイなどの独自技術を、3DCG制作環境に最適化したもので主に3つの技術で構成されている。

 1つ目がモーションセンシングを、より高度で簡単に行える「XYN Motion Studio」だ。体に装着し動きをセンシングするモーションセンシングツールとしては以前から「mocopi」(6個セット)を展開していたが、XYN Motion Studioは、このmocopi12個と連携し、独自アルゴリズムによるモーション自動補間機能や、自動タグ付け機能などにより、簡単にモーション映像を作成できるWindows版PCアプリケーションだ。2025年3月下旬から提供を開始するという。

 CES会場では、実際にmocopiを付けたアクターがさまざまな動きをし、それがリアルタイムで映像内に反映され、キャラクターがリアルに動く様子が紹介された。また、モーションモデルとモーションモデルの間のつなぎの動作をXYN Motion Studioが自動で補間して作成する様子などもデモした。

photo 体の12カ所にmocopiを装着し高精度で体の動きを把握(左)し、それをリアルタイムで映像内に取り込むことができる(右)、XYN Motion Studioでモーションの間を自動で補う機能なども備えている[クリックで拡大]

 ソニー インキュベーションセンター XR事業開発部門 事業企画部 マーケティング課 統括課長の別府大輔氏は「映像制作の現場でも作業量の増大と人手不足で悩むケースが増えている。最終的な作品の前にもプレビズなどクリエイターは何度も何度も映像を作る必要がある。高品質が求められない場合はこれらを簡単に補えるツールを使うことで、作業効率を高め、作業期間を短縮できる」と価値について述べている。

photo モーション映像の補間を説明する様子[クリックで拡大] 出所:ソニー

 2つ目が「XYN空間キャプチャーソリューション」だ。これは、ミラーレス一眼カメラで撮影した画像と独自アルゴリズムを用いて、現実の物体や空間から高品質でフォトリアルな3DCGアセットを作るソリューションで現在開発中だ。通常の2次元カメラから3次元の物体をキャプチャーするためには、複数回、確度を変えて撮影する必要があるが、これらをモバイルアプリによってガイドすることで簡単に高精度の3DCGモデルを作り出すことができることが特徴だ。「全ての物体を3DCGで一から作ることは大変だ。既に物体としてあるものはキャプチャーで取り込むことで、作業期間を低減できる」と別府氏は語っている。

photo キャプチャーの様子。3DCGとして情報が取れている部分と取れていない部分などをモバイルアプリで表示し簡単に高精度な3DCGが作成できる[クリックで拡大]

 3つ目が現在開発中のヘッドマウントディスプレイ(HMD)「XYN Headset」だ。4K OLEDマイクロディスプレイやビデオシースルー機能を搭載し、直感的な空間コンテンツ制作に対応する。CESでは映像制作領域での活用を訴えた。3D制作ソフトウェアへの対応を予定しており、Sony Pictures Animationとの実証実験なども行っているという。映像制作領域だけでなく、XYNのこれらの仕組みは、CADデータの制作や確認など、工業デザイン分野での活用なども可能で「それらの領域での提案は別で行っていく」(別府氏)としている。

photo 「XYN Headset」。以前からベースとなるHMDは開発していたが今回は映像制作用にブラッシュアップしたという[クリックで拡大]

乗り物を使った撮影の負荷を大きく下げるオールインワンソリューション

 XYNに加えて、新たな映像制作ツールとしてソニーグループがCES 2025で出展したのが「PXO AKIRA(ピクソ アキラ)」だ。PXO AKIRAは、モーションプラットフォーム、ロボットカメラクレーン、LEDビジョン、レーシングシミュレーターを組み合わせ、車両や航空機など乗り物の動きを撮影することを可能とする画期的なプラットフォームだ。LEDビジョンに映した映像とそれに合わせて乗り物を動かすモーションプラットフォーム、カメラクレーンなどを同期制御することで、あたかも実機で撮影しているかのような映像を360度自由な角度で撮影できる。

photo PXO AKIRA。乗り物を乗せたプラットフォーム、LEDビジョンの映像、カメラなどをデジタルツインで同期制御し、リアルな映像撮影が可能[クリックで拡大]

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(取材協力:パナソニック コネクト)

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