機械設計者が思わず「簡単に言うなや!」と身構える要求6選【前編】設備設計現場のあるあるトラブルとその解決策(16)(1/3 ページ)

連載「設備設計現場のあるあるトラブルとその解決策」では、設備設計の現場でよくあるトラブル事例などを取り上げ、その解決アプローチを解説する。連載第16回は、機械設計者が思わず「簡単に言うなや!」と身構えてしまう要求6選の前編として、「レイアウト変更」「からくりを使った低コスト化」「左右対称の装置」の3つを取り上げる。

» 2026年08月10日 08時00分 公開

こんな人にオススメの記事です!

設備設計現場のあるあるトラブルとその解決策
  • 設備設計の品質問題や手戻り作業の多さに悩んでいる方
  • 設備設計に関するスキルアップを図りたい方
  • 信頼される設備設計者を目指したい方

 本連載は、前回シリーズ「いまさら聞けない 製品設計と設備設計の違い」をイントロダクションと位置付け、設備設計の現場でよくあるトラブル事例などを紹介し、その解決アプローチを解説していきます。

今回のテーマ:機械設計者が思わず「簡単に言うなや!」と身構える要求6選

 筆者は普段、FA業界で機械設計や現地デバッグなどの仕事をしています。

 日々、お客さまとの打ち合わせや現場での作業に対応していますが、設備設計の現場では、客先や社内の営業から「これくらいは簡単だろう」という前提で持ち込まれる要求が少なくありません。

 そんなとき、機械設計者の皆さんは、

  • そんなのむちゃぶりだ……
  • 技術的にはできるかもしれないけど……
  • やろうとすると、時間もコストもかなりかかるんだけど……
  • 何でもっと早く言ってくれなかったんだ。やり直しだよ……

と心の中で思うはずです。筆者自身も、このような経験を数え切れないほどしてきました。

 しかし、実際にこのような要求があったとしても、「設計のプロとしてのプライド」や「世の中に通用する設計者」を目指している身からすると、「対応できない」「引き受けるのは難しい」と言うのは、かなり勇気がいります。

 あたかも「私はスキルがありません」と明言しているように感じますし、「お客さまや会社から期待されなくなってしまうかもしれない……」と考えると、突っぱねる勇気がなかなか出ません。

 さらに厄介なのは、こうした要求を突っぱねられないまま抱え込むうちに、「これはむちゃな要求なのか?」「それとも自分の実力不足なのか?」を見極める判断基準そのものが、少しずつゆがんでいってしまうことです。

 本来、すり合わせや交渉が必要な場面で判断を誤れば、追加工数もコストも膨らみ、現場のトラブルへと発展します。判断基準がゆがんだまま、「難しいけど、やるしかない」と渋々引き受け続ければ、他の関係者にも迷惑が掛かり、自信は削られ、仕事そのものが辛くなっていきます。

 せっかく就いた仕事にもかかわらず、そのような状態になってしまうのは非常にもったいないですよね。

 そこで今回は、機械設計者の皆さんが「そんなこと、簡単に言うなや!」と言いたくなるような要求の事例をいくつか紹介します。本稿が、日々のプロジェクトを進める中で、要求の妥当性を判断したり、関係者とすり合わせたりする際の参考になれば幸いです。

※この記事の内容には、一部、SNSのフォロワーの皆さまから募集した内容も含まれます。ご回答いただいた皆さま、ご協力ありがとうございました。

事例(1):レイアウトが変わったので……

 これは、特に生産ラインのような中〜大規模のプロジェクトでありがちなトラブルです。

 生産ライン規模のプロジェクトになると、全ての設計/製作を1社で対応することはほとんどなく、工程ごとに異なる設備メーカーへ発注し、各社が設計/製作/据え付け/調整を並行して進めていくケースが多くあります。

 このようなプロジェクトでは、エンドユーザーまたは元請け企業が、ワークの搬入/搬出経路や作業者の動線、メンテナンス性などを考慮しながら、ライン全体のレイアウトを決定します。ここでいうレイアウトには、各工程へのワークの投入/排出方法や、各工程で使用できる設置スペースなども含まれます。その後、決められたレイアウトにのっとって、各設備メーカーが装置の設計を進めていきます。

 ところが、プロジェクトがある程度進んでくると、突然、レイアウトを取りまとめた会社から次のような連絡が入ります。

すいません。レイアウトが変わったので、対応をお願いします。

 おそらく、レイアウトをとりまとめた会社も最初は問題ないと思っていたのでしょう。しかし、

  • よくよく考えたら、このレイアウトでは特定の作業に不都合があることに気が付いた(フォークリフトが通れない、設備故障時に設備内からワークを取り出せないなど)
  • 柱や電源の位置との関係で、設置上の都合が悪いことが判明した
  • 現場から、そのレイアウトに対する変更要請が出た
  • 各設備メーカーから提出された図面を眺めていたら、特定の工程でレイアウト変更が必要だと気が付いた

など、後から不都合が生じる/問題点に気が付くことも珍しくありません。そこで、機械設計者に連絡を入れ、対応をお願いするわけです。

レイアウト変更に伴うトラブルのイメージ 図1 レイアウト変更に伴うトラブルのイメージ[クリックで拡大]

 こうした要求を受ける機械設計者からすれば、「簡単に言うなや!」と言わざるを得ません。

 というのも、設計者にとってレイアウトが変わるということは、「設計の前提が変わる」レベルの変更だからです。特に、ある程度設計が進んでからレイアウトが変更されると、次のような対応が必要になります。

  • レイアウト変更に対応するため、アクチュエーターやセンサーを追加する
  • 要求されているサイクルタイムを満たせるか再度検討する。満たせない場合は、これまでの設計や部品選定を見直す
  • 部分的な追加や変更だけでは解決できない場合、初期段階まで戻って設計を見直す

 もちろん、設計/製作を受注した後の変更となれば、再設計による追加工数だけでなく、装置の製作費や納期にも大きく影響してきます。

 ただ実際のところ、お客さまの顔色をうかがってしまい、メーカー側が追加費用や納期の見直しを求めなかったり、求めたとしても認められなかったりすることもあります。その結果、現場でトラブルに発展するケースも少なくありません……。

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