Apple初の折りたたみスマートフォン「iPhone Duo」では、再生素材の活用や製造工程の脱炭素化など、環境配慮設計の取り組みが進められている。本稿ではiPhone Duoの製品環境報告書や公式情報を基に、その具体的な内容を紹介する。
Appleは、2030年までに世界全体における同社のカーボンフットプリントをニュートラルにする環境目標「Apple 2030」を掲げている。2015年比で温室効果ガス排出量を75%削減した上で、残る炭素排出量を相殺することを目指す。この一環として、製品設計や製造工程での再生素材の活用や脱炭素化など、環境負荷低減に向けた取り組みを進めている。
2026年9月9日(米国時間)に発表された「iPhone Duo」も、こうした方針の下で設計されている。Apple初の折りたたみiPhoneで、開いた状態では7.6型の「Super Retina XDR」インナーディスプレイを、閉じた状態では5.4型のSuper Retina XDRアウターディスプレイを利用できる。2nmプロセスの最新チップ「A20 Pro」を搭載し、価格は36万4800円(税込み)からとなる。
iPhone Duoの「製品環境報告書」によると、デバイス本体の質量に対して35%の再生素材が使用されているという。
内部構造フレームには100%再生アルミニウムを採用し、バッテリーには100%再生コバルトと95%再生リチウムを使用する。全ての磁石には100%再生レアアースを用いている。
「MagSafe」充電器では、銅箔(はく)と銅線に100%再生銅を、はんだに100%再生スズを採用する。Appleが設計した全てのプリント基板では、金メッキに100%再生金、はんだに100%再生スズを使用している。さらに、バッテリー筐体やディスプレイ支持板など複数の部品には80%再生スチールが使われている。
チタンについても再生素材を活用している。筐体に85%再生チタンを使用する他、3Dプリント製のヒンジカバーにも100%再生チタンを採用している。
iPhone Duoでは、製造工程の脱炭素化にも取り組んでいる。製造に使用する電力の60%は再生可能エネルギー由来となっている。Appleは、サプライヤーによる再生可能エネルギーの調達拡大などを通じ、バリューチェーンにおける排出量の削減を進めている。
Appleの試算によると、iPhone Duoの256GBモデルにおけるライフサイクル全体の温室効果ガス排出量は93kg(CO2e)となる。この値には製品本体とその構成部品に加え、パッケージや同梱アクセサリーも含まれている。排出量の内訳は、生産が75kg(CO2e)、再生可能エネルギー発電インフラが2kg(CO2e)、輸送が3kg(CO2e)、製品使用が13kg(CO2e)、使用済み製品の処理が1kg(CO2e)未満となっている。
エネルギー効率については、米国エネルギー省が定めるバッテリー充電器向けの連邦省エネルギー基準と比較して、エネルギー使用量が50%少ないという。
Appleは、材料やエネルギーだけでなく、製造工程やサプライチェーンにおける水資源や化学物質の管理にも取り組んでいる。
水資源については、Appleが2013年に開始した「Supplier Clean Water」プログラムを通じ、水ストレス(水資源の逼迫(ひっぱく)度)が高い地域のうち、水使用量の多い拠点を優先的に対象とし、2030年までに平均50%の水再利用率を目指している。
製造工程では、全ての最終組み立てサプライヤー拠点に対し、「ChemFORWARD」や米国環境保護庁(EPA)の「Safer Choice」「GreenScreen」などの評価手法に基づき、より安全と判断された洗浄剤や脱脂剤を使用するよう求めている。
製品やアクセサリー、パッケージに使用する材料についても、Appleの「Regulated Substances Specification」に基づいて管理する。この他、直接取引するサプライヤーだけでなく、その上流まで材料や化学物質に関するデータを収集する「Full Material Disclosure(FMD)」プログラムや、長時間皮膚に接触する材料に対する毒性評価なども実施している。
商品パッケージは100%ファイバー(繊維)ベースで、再生繊維または責任ある方法で調達された繊維のみを使用している。
また、iPhone Duoの最終組み立てを担う既存のサプライヤー拠点のうち、Appleのサプライヤーとなって1年以上の全拠点が、UL LLC(UL 2799)によるZero Wasteの第三者検証を受けている。UL 2799規格では、「Zero Waste to Landfill(廃棄物埋立処分ゼロ)」の認定に、廃棄物の少なくとも90%を廃棄物発電以外の方法で転用することが求められている。
iPhone Duoでは、製品を長く使用するための耐久設計にも取り組んでいる。ボディーにはグレード5チタンを採用。また、ヒンジカバーには100%再生チタンを使用し、3Dプリントで製造した上でマイクロブラスト加工を施している。
折りたたみ機構を支えるヒンジ部は100個以上の部品で構成され、開閉を正確に制御しながらディスプレイの中央を支える構造となっている。また、iPhone Duoの内部には変形を防ぐ補助リブを組み込む他、アンテナの分割部分にセラミックファイバーを採用し、フレームの剛性を高めたという。
インナーディスプレイにも耐久性を高める工夫を施した。表面には耐擦傷コーティングを施す他、独自のポリマーを用いたカバー層に、映り込みや反射を軽減するNano-texture仕上げを採用している。このポリマーは、業界で使用されている他の素材と比べ、剛性が最大40%高いという。
さらに、独自の接着剤により、折りたたみディスプレイパネルの上下に配置した高強度ガラス層を、折りたたむ際に本のページのように互いにスライドさせる。これにより、折り曲げ時に生じる摩擦を緩和する。ディスプレイ下部にはチタンプレートを配置し、耐久性を高めている。こうした積層ラミネーション設計により、時間経過に伴うパネルの歪みも抑えるとしている。
アウターディスプレイには、ナノセラミック結晶を組み込んだ高耐久ガラス「Ceramic Shield 2」を、背面には「Ceramic Shield」を採用している。
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