「iPhone 16」はどれだけ地球に優しくなった?サステナブル設計

Appleが発表した新製品ラインアップ「iPhone 16 Pro/iPhone 16シリーズ」と「Apple Watch Series 10」について、“環境に配慮したAppleのモノづくり”の観点で注目してみた。

» 2024年09月11日 07時00分 公開
[八木沢篤MONOist]

こんな人にオススメの記事です!

「iPhone 16」はどれだけ地球に優しくなった?
  • Appleのモノづくり/環境配慮の取り組みに興味のある方
  • 再生材を活用した製品開発に興味のある方
  • カーボンニュートラルの推進に興味のある方

 Appleは2024年9月9日(米国時間)、オンラインイベント「Apple Event」において、新製品ラインアップを発表した。

 同イベントでは、スマートフォン「iPhone Proシリーズ」の新製品として「iPhone 16 Pro」と「iPhone 16 Pro Max」を、「iPhoneシリーズ」の新製品として「iPhone 16」と「iPhone 16 Plus」を発表した他、スマートウォッチ「Apple Watchシリーズ」の最新モデル「Apple Watch Series 10」などが紹介された。

 新製品の特長や機能については、既に多くのメディアで取り上げられているため、本稿では“環境に配慮したAppleのモノづくり”の観点から、新製品ラインアップにおける再生材の活用に注目してみたい。なお、いずれの製品も、製品仕様ページ上で「環境への負荷を軽減できるように設計されている」ことがうたわれている。

iPhone 16 Pro/iPhone 16シリーズ

 フラッグシップモデルに当たるiPhone Proシリーズの最新機種iPhone 16 Pro/iPhone 16 Pro Maxでは、内部構造フレームと放熱構造部に100%再生アルミニウムを採用する他、複数の部品(Taptic Engine、スピーカー、複数の小型部品、ディスプレイ補助プレートを含む)に80%再生スチールを、14個の部品に50%以上再生プラスチックを使用している。

「iPhone 16 Pro」のカラーバリエーション 「iPhone 16 Pro」のカラーバリエーション[クリックで拡大] 出所:Apple

 一方、iPhone 16/iPhone 16 Plusでは、筐体内部の放熱構造部に100%再生アルミニウムを使用し、複数の部品(Taptic Engine、スピーカー、複数の小型部品、ディスプレイ補助プレートを含む)に80%再生スチールを、20個の部品に50%以上再生プラスチックを用いている。

「iPhone 16」のカラーバリエーション 「iPhone 16」のカラーバリエーション[クリックで拡大] 出所:Apple

 バッテリー周りは、iPhone 16 Pro/iPhone 16シリーズ共通で、100%再生コバルトと95%以上再生リチウムを使用している。なお、95%以上再生リチウムの採用については「Appleでは初めて」(製品仕様ページより)だとしている。

 同じく、iPhone 16 Pro/iPhone 16シリーズの共通仕様としては、全てのカメラとカメラ制御の配線、複数のプリント回路基板のメッキ、USB Type-Cコネクター、その他の小型部品に100%再生金を使用している。

 複数のプリント回路基板には100%再生銅が、「MagSafe」の電磁誘導充電器には100%再生銅ホイルと100%再生銅線が採用されている。プリント回路基板のハンダ付けには100%再生スズが用いられている。

 振動と触覚フィードバック機能を実現する装置「Taptic Engine」には、100%再生タングステンと再生銅線を使用。全てのマグネット(磁石)には100%再生希土類元素が使われている。

 その他、水銀、BFR(臭素系難燃剤)、PVC(ポリ塩化ビニル)の不使用や、100%繊維ベースの素材を用いたパッケージの採用などをうたっている。

 これらの取り組みによって、製品全体(パッケージや同梱アクセサリーは除く)としての再生素材または再生可能素材の使用比率は、iPhone 16 Pro/iPhone 16 Pro Maxで25%以上、iPhone 16/iPhone 16 Plusで30%以上を達成したという。ちなみに、引き続き販売が継続される前モデル「iPhone 15」の再生素材使用比率は23%となっている。

項目 iPhone 16/16 Plus iPhone 15/15 Plus
Apple 2030/2030年のカーボンニュートラル達成に向けた取り組みの進捗 ・再生素材の割合は30%以上
・Appleがモデル化した通常のビジネスシナリオに対して排出量を30%削減
・再生素材または再生可能素材の割合は23%
・排出量を基準値比で25%削減
エネルギー ・製造に必要な電力の30%以上を再生可能電力から調達
・米国エネルギー省によるバッテリー充電システムの要件を上回る高効率
・製造に必要な電力の30%以上をサプライヤークリーンエネルギープロジェクトから調達
・最終組み立てを担う全サプライヤー施設が、Apple製品の製造を再生可能エネルギーで100%まかなうために移行中
・米国エネルギー省によるバッテリー充電システムの要件を上回る高効率
廃棄物 ・Appleの廃棄物ゼロプログラムの一環として、既存の最終組み立て施設による埋め立て処理廃棄物の発生量はゼロ ・Appleの廃棄物ゼロプログラムの一環として、既存の最終組み立て施設による埋め立て処理廃棄物の発生量はゼロ
素材 ・改良された内部設計の放熱基盤に100%再生アルミニウムを使用
・放熱基盤に100%再生アルミニウムを使用
・バッテリーに100%再生コバルトを使用
・Appleでは初めて、バッテリーに95%以上再生リチウムを使用
・全てのカメラとカメラコントロールのワイヤーに100%再生金を使用
・複数のプリント回路基板のメッキ、USB-Cコネクター、複数の小さな部品に100%再生金を使用
・複数のプリント回路基板に100%再生銅、電磁誘導充電器に100%再生銅ホイルと再生銅線を使用
・複数のプリント回路基板のハンダ付けに100%再生スズを使用
・Taptic Engineに100%再生タングステンと再生銅線を使用
・全てのマグネットに100%再生希土類元素を使用
・複数の部品に80%再生スチールを使用(Taptic Engine、スピーカー、複数の小さな部品、ディスプレイ補助プレートを含む)
・20の部品に50%以上再生プラスチックを使用
・ファイバー素材を100%使用したパッケージ
・パッケージ用ファイバーに64%再生素材を使用
・筐体に75%再生アルミニウムを使用
・Appleでは初めて、バッテリーに100%再生コバルトを使用
・メインロジックボードと、MagSafeの電磁誘導充電器に100%再生銅ホイルを使(電磁誘導充電器での使用はAppleでは初めて)
・Taptic Engineに100%再生銅線と100%再生タングステンを使用
・全てのカメラのワイヤー、複数のプリント回路基板のメッキ、USB-Cコネクターに100%再生金を使用
・全てのマグネットに100%再生希土類元素を使用(デバイスに使われる希土類元素の総量の100%)
・複数のプリント回路基板のはんだ付けに100%再生スズを使用
・複数の部品で35%以上再生プラスチックを使用
・ファイバー素材を99%以上使用したパッケージ
・バージン木材繊維の100%を責任ある方法で管理された森林から調達
化学技術 ・無ヒ素ガラス
・水銀、BFR(臭素系難燃剤)、PVC(ポリ塩化ビニル)不使用
・無ヒ素ガラス
・水銀、BFR(臭素系難燃剤)、PVC(ポリ塩化ビニル)、ベリリウム不使用
表1 「iPhone 16/16 Plus」と「iPhone 15/15 Plus」の製品仕様ページからの抜粋(一部編集/再構成) 出所:Apple

Apple Watch Series 10

10世代目となる「Apple Watch Series 10」 10世代目となる「Apple Watch Series 10」[クリックで拡大] 出所:Apple

 10世代目にして、ディスプレイの大型化と薄型化を果たしたApple Watch Series 10では、ケースに100%再生アルミニウム(アルミニウムモデルの場合)/95%再生チタニウム(チタニウムモデルの場合)を採用している。

 バッテリーには100%再生コバルトを使用。複数のプリント回路基板のメッキには100%再生金が用いられている。また、複数のプリント回路基板に100%再生銅が使用され、プリント回路基板のハンダ付けには100%再生スズが使われている。

 Taptic Engineには、100%再生タングステンと再生銅線、80%再生スチールを使用。全てのマグネットには100%再生希土類元素が用いられている。スピーカーには25%再生可能プラスチック部品が使用され、スピーカーのヨークには80%再生スチールが用いられている。

 その他、水銀、BFR、PVCの不使用や、100%繊維ベースの素材を用いたパッケージの採用など、iPhone 16 Pro/iPhone 16シリーズと共通している点も多く見られる。

 これらの取り組みによって、Apple Watch Series 10の製品全体(パッケージや同梱アクセサリーは除く)としての再生素材または再生可能素材の使用比率は30%以上を達成している。

⇒ その他の「サステナブル設計」関連ニュースはこちら

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.