連載「設備設計現場のあるあるトラブルとその解決策」では、設備設計の現場でよくあるトラブル事例などを紹介し、その解決アプローチを解説する。連載第9回は、「誰も教えてくれない設計NGあるある【光電センサー編】」をお届けする。
本連載は、前回シリーズ「いまさら聞けない 製品設計と設備設計の違い」をイントロダクションと位置付け、設備設計の現場でよくあるトラブル事例などを紹介し、その解決アプローチを解説していきます。
皆さん、こんにちは! りびぃです。筆者は普段、FA業界で生産設備の設計をしていますが、“生産設備の設計”と一口にいっても、その内容は簡単な治具のような規模のものから、半自動機、自動機ほどの規模に至るまで多種多様です。
その中で、あらゆる規模の機械/機構に幅広く搭載されている部品があります。その一つが「センサー」です。
センサーは、人間の“五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)”の役割を担う部品だといえます。周囲の状況などをセンサーによって検知し、その信号を人間の“脳”に相当するCPUやPLCへ伝えることで、自動で物事を判断したり、特定の挙動をさせたりすることができます。
世の中にはさまざまな種類のセンサーがありますが、筆者の経験上、生産設備の設計では特に「光電センサー」を使う頻度が非常に高いです。
光電センサーは、投光部から照射された光を、受光部で検出して出力信号を得るためのものです。正常に光を受け取れたか、あるいは物体などに遮られて受け取れなかったかを検出することが可能で、“非接触での物体検知”を安価に実現できることから、生産設備の現場で広く採用されています。
そんな光電センサーですが、いざ導入するとなると、設計上いくつか押さえておくべき重要なポイントがあります。そのポイントを押さえて設計をしないと、誤検知によって機械のチョコ停を招いてしまったり、装置の省スペース化やメンテナンス性に悪影響を及ぼしたりなど、大きなトラブルにつながってしまいます。
では、どこに気を付ければよいか? ですが、実際にはメーカーのカタログにも記載がほとんどなく、周囲の機械エンジニアが丁寧に教えてくれることもほぼありません……。
そこで今回は「誰も教えてくれない設計NGあるある【光電センサー編】」と題し、光電センサーを使った機械設計のポイントについて、現役の機械設計者である筆者の経験を交えながら分かりやすく解説していきます。
光電センサーにはいくつかのタイプがありますが、その中には付帯部品を使用するものがあります。
例えば「回帰反射型」の場合、光電センサーの光を受光側へ反射させるために「リフレクター」という部品を使用します。「フォトマイクロセンサー」であれば、「ドグ」と呼ばれる部品をコの字型のセンサー本体が検出できるように取り付けます(図1)。
こういったセンサーや付帯部品を機構の固定側、動作側のどこに配置するかを検討する際、特別な理由がない限りは“動作側にセンサー本体、固定側に付帯部品を配置することはNG”です。
最大の理由は「機構の構造が肥大化、複雑化するから」です。世の中で使用されている光電センサーのほとんどは、有線によって電力供給がなされるため、センサーを配置する際は“センサーへの配線ルート”も併せて設計する必要があります。
その上で、動作側へセンサー本体を配置するとなると、動作時に配線へ負荷がかかったり、周辺部品に引っ掛けて損傷したりしないよう配慮する必要が生じてしまいます。そうした際に「ケーブルキャリア」を導入してケーブルを保護することがよくありますが、ケーブルキャリア本体とそのブラケットの配置が必要になるため、“機構の構造が肥大化、複雑化”しやすくなってしまいます。
もう一つの理由は「メンテナンス性が悪化するから」です。現場によりけりではありますが、光電センサーは定期的に取り外しや交換などのメンテナンスをすることがあります。その際、センサー本体が動作側に配置されていると、配線がケーブルキャリアなどに収納されている関係で、作業性が非常に悪くなってしまいます。
また、産業用ロボットの手首部などの複雑な動作をする機構の動作部にセンサーを配置する際、配線の余長をうまく使うことで、配線が動作に追従するようにしますが、この配線方法は“再現性が低い”というデメリットがあります。
このようなケースにおいて、メンテナンス完了後に再配線するとなると、再び「配線が動作に追従するか」「周辺部品に引っ掛からないか」などを慎重に確認しながら配線ルート/余長を調整しなければならず、復旧までに多くの時間を要してしまいます。
以上のように、“動作側に配線がある”というだけで、配慮すべき事項が増えてしまうのです。
これらのデメリットは、付帯部品へは配線をする必要がないことから、“センサー本体を固定側に、付帯部品を動作側に配置する”ことで解決できます。
また、透過型の光電センサー(投光部と受光部とで、本体が分かれているタイプ)を使用する際にも“なるべく動作側にセンサーを配置しない設計”にすべきです。もっと言えば、そもそも透過型ではなく、反射型の光電センサー+リフレクターの組み合わせにするなどの工夫を施すべきだといえます。
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