enmono 最後に皆さんにお伺いしている質問があります。梶川さんが考える日本の金型の未来、日本のモノづくりの未来、町工場の未来でもいいです。そういったことに思いがあればお聞かせください。
梶川 未来に関しては今ウチの会社のWebページにも載せてあるんですけど、製造業では「多能工」っていう言葉があるんですけど、その「能」をもじって「脳みその脳」に変えてあるんですよ。なんでその「脳」に変えたかといったら、結局能力だけじゃなくて考えましょうという。
梶川 発想もその1つだし、同じ事を同じようにやるんだったらロボットの方が絶対速くて正確で大量生産もできるので、ロボットにできないことをやりましょうっていうのをコンセプトにWebページも作っています。なので、製造業に関わる方たちはロボットとかコンピュータができないような手仕事だったり匂いだったり音だったり、そういった人間しかできないような環境で仕事を進めていっていただきたいなと。
enmono 人間の本来持っているいろいろな感覚を研ぎ澄まして、そこから機械ができないようなものを生みだすと。それはアートにもかかってきているんでしょうか?
梶川 アートはやっぱり創造なので、共通するところはあると思います。
enmono そうですね、このアルミ欄間はまさにアートですからね。
enmono そういう場があって、作品が集まって、人も集まって。
梶川 ということです。
enmono うまくまとまりましたね。
梶川 我ながら。
一同 (笑)。
enmono 「型にはまらない金型」「町工場の逆襲」とかいろいろなキャッチフレーズが面白いですね。
梶川 知らない人が聞いたら「大丈夫なの? その会社」って。私も最初「題名は崖っぷち町工場の逆襲です」って言われた時、「これってウチのイメージいいのか悪いのかよく分からないなぁって一瞬ドキッとしたんですけど、よくよく考えてみたら崖っぷちっていうのは、売上が下がったからとか、そういう崖っぷちじゃなくて、先ほどから言っている人間の考えがフリーズしちゃうのが私は一番崖っぷちだと思うんですよ。
enmono そうですね。
梶川 例えば昔はもっと売上がよかったのに、今ほど幸福感ってなかったんですよ。
enmono 今の方が幸福感が高い?
梶川 今の方が、なかったものができたり、売上は今度の話で。
enmono 未来につながる――。
梶川 そうそうそう。これから「じゃあ、どうしていこうか」っていう先の話ができるんですけど、バブルの頃はやれ「納期がどうだ」「単価がどうだ」と言われることしかなかったので、どちらかというと今の方がのびのびと……
enmono 未来に対して希望が出てきたんですね。
梶川 私だけかもしれない(笑)。
enmono いや、社長が変わることが重要です。社長の意識が変わると社員も変わってきますから。
梶川 それこそ「型にはまらない金型」で、「はまらないぞ」という意識でまず一歩進めたかなと。
enmono 最近、慶応大学の前野先生という方と一緒に、モノづくりをすると幸福度があがるんじゃないかというテーマで共同研究をしているんですけど、まさにその1つの事例だと思います。
enmono はい、ということでお話はいろいろ尽きないんですけども、お時間となりました。本日はありがとうございました。
梶川 ありがとうございました。
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