溶接屋とデザイナーが手掛けるバリアフリーなハンドバイクzenmono通信(1/2 ページ)

モノづくり特化型クラウドファンディングサイト「zenmono」から、モノづくりのヒントが満載のトピックスを紹介する「zenmono通信」。今回は、宇賀神溶接工業所の宇賀神一弘さんと、テコデザイン代表の柴田映司さんが登場する。

» 2014年12月15日 10時00分 公開
[zenmono/MONOist]


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本記事はモノづくり特化型クラウドファンディングサイト「zenmono」の記事に最新情報を加筆・編集した上で転載しています。


 宇賀神溶接工業所は、40年培ってきたノウハウと高い技術力による「精密板金溶接加工」を得意とする。事業の柱の1つは受注生産、もう1つは、同社の2代目社長である宇賀神一弘さんが始めたオリジナルプロダクトの開発である。自社ブランドとしては、ステンレス材を用いた家具やプロダクトのブランド「WELDICH(ウェルディック)」と、ハンドバイク専門ブランド「HandBike Japan(ハンドバイク ジャパン)」がある。

 宇賀神さんは独立心が強い。それは自他ともに認めるところだが、オリジナルプロダクトの開発を始めたのは、以下のようなことを考えたことがきっかけだった。

「受注生産だけで、将来は大丈夫だろうか?」

「自社製品があれば、自社の技術をもっとアピールできる」

 受注生産した商品は守秘義務もあるため、会社のパンフレットや展示会でオープンに紹介することは、なかなか難しい。自社製品を作るのなら、ステンレスの可能性を広げるようなインテリア製品にしよう。そう考えた宇賀神さんは、休日を利用して専門学校に通い、インテリアデザインを基礎から学び始めたのだ。そして自らデザインもする溶接職人となり、作品をコンペに応募したり、工業系以外の展示会に出展するようになったという(関連記事:溶接職人だけどデザインコーディネーター)。

「座ってみたい北の創作椅子展」で入選し、北海道帯広市で展示されている宇賀神さんの作品

 宇賀神さんは2008年、デザインイベント「TOKYO DESIGNERS WEEK」に参加している。翌2009年にニューヨーク国際現代家具見本市に出品したテコデザイン 代表の柴田映司さんがデザインした家具、DNA shelfを製作した。柴田さんは宇賀神さんの専門学校時代の講師でもあった。その当時は宇賀神さんも柴田さんも、2人でハンドバイクを開発することになるなど、想像もしていなかったそうだ。

柴田さんが「ニューヨーク国際現代家具見本市(ICFF)2009」に出品した、DNA shelf(写真中央)

 宇賀神さんは宇賀神溶接工業所に入社する前、営業の仕事をしていた。展示会の出展仲間から加工の仕事を依頼されるようになった宇賀神さんは、持ち前のコーディネート力で、そのつながりを「DESIGN Heart」というデザインユニットへと進化させていった。専門分野の異なるプロたちとコラボレーションできるネットワークである。2010年に始動した同プロジェクトは現在、13組19名のデザイナーが商品企画から販売まで行っている。宇賀神さん自身も、その当時、インテリア製品ブランド WELDICHを立ち上げた。

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