Safety Firstが主役となった今回のシンポジウムで、脇役として度々登場したのが「Smart City」だ。これは、米国運輸省が2015年12月に公表した未来型交通の普及を目指す都市構想だ。
この都市構想に参加する自治体を「Smart City Challenge」として全米から公募したところ、78都市が名乗りを上げた。このうち7都市が最終選考に残り、その中からオハイオ州コロンバス市が選定された。
コロンバス市では、路面電車(Light Rail Transit、LRT)や、バス高速輸送システム(Bus Rapid Transit、BRT)の整備を進めると同時に、10人乗り程度の自動運転車を使った運行サービスを開始するという。公共交通機関としての自動運転は、欧州が実証試験で先行しており、欧州の事業者や研究者からのアドバイスも受ける予定だ。
将来的には、この領域についても、NHTSAがSafety規定について詳しいガイドラインを示すことが考えられる。
ここ2年ほどで、自動運転は一気に表舞台に出てきた。
歴史を振り返ると、1950年代にGeneral Motorsと電機メーカーのRCAが、量産車を改造した無人走行車で走行テストを行った。その後、1980年代になると日米欧の自動車メーカーが、CCDカメラやレーダーなどを使った無人自動車の実験を開始している。だが、自動運転は実需が不明瞭でコストも高く、実用化のめどは立たなかった。
それが近年になって、コネクテッドカー、画像認識、そしてディープラーニングなどの分野で革新的な技術開発が進み、ITジャイアンツやベンチャー企業が積極的に参入してきた。さらに、各国や企業の思惑が先行して投資を呼び込み“自動運転プチバブル”といえるほどのブームとなってきた。
そうした中、米国はSafety Firstを掲げて、自動運転のあるべき姿を具体的に検証する姿勢を見せた。これは、自動車産業界とIT業界、そして投資家にとって、自動運転を冷静に見つめるための良い機会になるのかもしれない。
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