米国政府がいう自動運転のガイドラインは、車両に関わる衝突安全や走行に関する性能、道路交通法に関する法整備など、多岐にわたると考えられる。その施行時期を明記するのかは、現時点では予想できない状況だ。
ただし、今回のシンポジウムの主題である「Safety」について、3日目の講演でNHTSAから具体的な内容の発表があった。講演の題目は「Automated Vehicles : Accelerating Their Safe Arrival」だ。ここで、Vehicle Safety Researchの関係者が明らかにしたのは、NHTSAにおける自動運転のSafetyに関する考え方のチャート図と、現在進行中の調査、研究項目だった。
それによると、調査/研究は大きく5項目に分かれる。
Human Factorsでは、レベル2の自動運転におけるHuman Performance Researchを行う。既に公開されているレベル2〜3におけるHuman Factors Evaluationに加えて、Human Factors Designのガイダンスが近日中に公開予定だという。
さらに、テスラのモデルSやAudiのSUV「Q7」、日産自動車のインフィニティブランドのセダン「Q50」、Mercedes-Benzのセダン「E350」、Volvo CarsのSUV「XC90」などを用いたNaturalistic Driving Studyなどを行う。
この他、2016〜2017年にかけて、System Performance Requirement や、Electronic Control Systems Safetyについての調査や研究を行うことを明らかにした。こうしたNHTSAの調査/研究が、米国運輸省が作成する自動運転のガイドラインに随時反映されていくことになる。
そうなると課題になるのが国連との“すり合わせ”だ。
日本とドイツは自動操舵専門会議などを介して、国連で自動車の安全や環境基準を審議するWP29(国連自動車基準調和世界フォーラム)について米国政府へ働きかけ、米国を巻き込む形で自動運転の安全性に関する国際標準化を進めようとしてきた。
一方、EUからは英国政府関係者などが登壇し、欧州域内での自動運転に関する実証試験の経緯と、今後の方針を説明した。だが、これらの欧州主体の取り組みから、各国政府や国連が進める自動運転の法整備に対してどのように情報をフィードバックするのか、具体的な提示がない。となれば、NHTSAが自動運転の安全性について独自の調査/研究を強化し、最終的には国際標準化が米国主導の色合いが濃くなっていってしまう。
日本としては、これまで国連との連携を最重要視してきたが、ここへきて米国政府の動きにもさらなる注意を払わなければならない状況だ。
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