電子部品大手の村田製作所は、「設計・製造拠点の多様化」「M&Aへの対応」「グローバル化」「顧客要求に対するクイックレスポンス」などを実現するために、Aras Innovatorを導入したという。
村田製作所 技術・事業開発本部 共通基盤技術センター CAD・CAE技術センター 企画課の紙田徹氏は「従来は日本国内で設計し日本国内で製造するのが一般的だったが、製造拠点や設計拠点も海外シフトが続いている。さらにM&Aを積極的に活用する経営方針もあり、社内でもさまざまなデータが混在する環境が出来上がっていた。一方で顧客からの要求は年々厳しくなっており、変化対応能力が問われ、バックボーンとなるデータ管理の必要性があった」と語る。
これらの要素から、PLMの選定を開始。以下の6項目を選定条件に挙げた。
この条件に対し「1〜4までの項目については候補に挙げたどのPLMもそれほど差はなかった」と紙田氏は語る。一方で残りの2項目では差が付いたという。
特に大きな違いとなったのは「変化対応能力」だ。一般的なPLMソフトウェアの場合、導入には、「要求使用」「見積もり」「社内決裁」「発注」「構築」「評価」「リリース」という流れが必要になる。この際、途中で変更したい点などが発生しても、変更するのは難しく「既に現状に即さなくなっていることに気付いても我慢しなければならない状況が発生する」(紙田氏)。
一方で、エンタープライズ・オープンソース・ビジネスモデルを取るAras Innovatorでは、これらのうち「見積もり」「社内決裁」「発注」の工数が必要なく「コストを掛けずに改良を進め『実際に使えるのかどうか』を判断できた。この柔軟な対応力からAras Innovatorを採用することを決めた」と紙田氏は話す。
村田製作所では、コンデンサをはじめとした非常に多くの種類の単品部品を取り扱っているが「単品部品ではBOMによる管理を行っていないモノも多かった」と紙田氏。そこで当初は既にBOMでの管理を行っていたモジュール製品からシステム導入を開始した。「スモールスタート戦略を取り、まずは部品に関するドキュメントと製品に関するドキュメントを整備。次に部品のデータベースを構築し、部品表の作成につなげていった」と紙田氏は述べている。
システム構築のポイントとなったこととして、GUIを中心とした操作系の部分は社内で作成し、Aras特有のコーディングが必要な部分についてはベンダーに任せた、という点を紙田氏は挙げる。「操作系を社内で作ったことで、実際に利用する担当者と意思疎通を密に行え、使いやすいシステムを構築することができた」と紙田氏は語っている。
今後に向けてはさらにPLMインフラの活用を進める一方、他システムとの連携なども強化していく方針。紙田氏は「さらなるM&Aへの対応やEMS活用などの製造環境の変化にも追従できるシステム構築を進めていく」と話している。
世界市場を見据えたモノづくりを推進するには、エンジニアリングチェーン改革が必須。世界同時開発を実現するモノづくり方法論の解説記事を「グローバル設計・開発」コーナーに集約しています。併せてご参照ください。
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