東芝は「東芝総合研究所 Media Day 2026」を開催し、同社の研究開発における最新の取り組みを紹介した。DXの先にあるQXの実現に向け、組織再編を経て加速する同社の新たな取り組みとは何か
東芝は2026年2月5日、東芝総合研究所内(神奈川県川崎市)で「東芝総合研究所 Media Day 2026」を開催し、同社の研究開発における最新の取り組みを紹介した。同社はQX(量子トランスフォーメーション)に向けた研究を進め、新たな歩みを進めている。
東芝 上席常務執行役員 CTOの佐田豊氏は「東芝 CEOの島田はDX(デジタルトランスフォーメーション)で社会をより良いものにするとともに、会社を成長させるという風に発言をしているが、彼の構想ではその先にQXを見据えている。社会活動から生まれるさまざまなデータを量子の技術で完全に吸い上げて、複雑な計算処理をすることで社会の持続性やレジリエンス、ウェルビーイングを高めていく社会。これが“量子社会”である」と語る。
東芝では「QKD(量子鍵配送)」や「量子インスパイアードコンピュータ」といった研究を進めているが、総合研究所ではその先の技術として「量子衛星通信」「量子中継器」「汎用型量子コンピュータ」などのキーデバイス関連の研究にパートナーと共創しながら取り組んでいる。
東芝が量子技術に関する取り組みとして「量子暗号通信」「シミュレーテッド分岐マシン」「ダブルトランズモンカプラ」の3つに注力している。量子暗号通信分野では東芝の商用サービスの高い信頼性が評価され、国内外で実施されている多様な実証に同社は参画している。
シミュレーテッド分岐マシン分野では、2019年に新しいアルゴリズムを発明し、国内外で最大規模の組み合わせ問題を最速(当時)で解くことを実証しているが、現在はさまざまなパートナーに技術を提供して、金融のリアルタイム取引や創薬の物流最適化問題、自動運転車両に技術を導入する取り組みを進めている。「『Quantum on Vehicle』という時代を実現させることをわれわれは目指している」(佐田氏)。
量子コンピュータのキーデバイスであるダブルトランズモンカプラ分野では、現在GAFA(Google、Apple、Facebook〈現Meta〉、Amazonの総称)を中心にさまざまな企業が「フォールトトレラント(誤り耐性)」な量子コンピュータの開発に取り組んでいる中、同社は周波数が大きく異なる量子ビット間の結合を完全にオン/オフ可能なデバイスとしてダブルトランズモンカプラを提案し、理化学研究所とともに量子計算の計算速度と精度向上の実現に向けた研究開発を進めている。
東芝は技術の研究開発だけではなく、新しい量子技術が生まれた際の産業応用に向けた取り組みも同時に進めている。量子技術による新産業創出協議会である「Q-STAR」のリーディングを執りながらユーザー企業と共に新しい量子技術アプリケーションについての議論や人材育成、他国の量子コンソーシアムと連携した安全な量子サプライチェーンの構築などに取り組んでいる。
佐田氏は「(下記の)図版は『量子技術が実現する社会』をイメージしている。当時は現実からちょっと離れた未来の絵を描いたつもりだったが、そこから約5年が経過して現実からの延長にある将来の絵になってきたと感じている。この絵をより近い将来に現実のものとするべく、東芝総合研究所内の力を結集して技術の開発に取り組んでいく」と強調する。
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