ワクワクする日本製造業のつながり力は、バーチャルかつリアル心技隊流「未来を創るヒント」

今回は、ヌンチャク系iPhoneケース「iPhone Trick Cover」の主 ニットー 藤沢秀行氏。初の自社製品の実現には、バーチャル(インターネット)とリアル(現実)、両方の世界の中小製造業のつながりが力となったと語る。

» 2012年12月27日 06時00分 公開
[藤沢秀行/ニットー,MONOist]

 子どものころから自分でいろいろなものを作ることが好きだった。町工場を経営する父の姿を見て憧れていた。会社を継ぎ、「さあ、これから!」というとき……。今までの製造業の体制は、大手メーカーを頂点としたピラミット構造で、それ程営業をしなくても、待っていれば上から仕事が流れてきていた。経済が右肩上がりの時代では、それで十分な利益も出せていた。しかし、バブルがはじけ、リーマンショックがあり、その状況は一変した。大手メーカーは、製造拠点を海外へ移し、部品調達も海外にシフトしていった。それに加えての、相次ぐ大幅な人員削減……。

「製造業は衰退産業になってしまうのか」

「中小製造業には暗い未来しかないのか」

 そう考えたときもあった。しかし……。

「今の時代だからこそ中小製造業が活躍できる、そして輝ける時代になっていく」。まさに実体験から、そう感じられるようになった。

 今年(2012年)の夏、当社(ニットー)初の自社製品「iPhone Trick Cover」を販売することができた。今までになかった、“ちょっと変わった”iPhoneケースだ(動画)。

 本製品のアイデアは、もともと製品化しようと考えていたものではなかった。当時の私はまだ心技隊に入隊していなかったが、緑川隊長(ミナロ 緑川賢司氏)からFacebookを通じて、MONOistの「春のおばかモノづくり祭」の企画のことをお聞きした。「面白そうな企画だ」とすぐに参加を決め、頭の中にあったiPhone Trick Coverを作ってみた。

MONOistの記事で掲載したiPhone Trick Coverのデモ

 2012年4月1日にMONOistで「春のおばかモノづくり祭」の記事が公開され、それが思わぬ反響を呼び、その4カ月後の8月には製品を販売開始していた。そして、この12月には新機種用の製品も発売開始し、その後わずか1週間で1000台以上を販売することができた。これは、“今の時代だからこそ”達成できたことだと考える。

 達成できた理由として、FacebookやTwitterなどのSNSや、クラウドファンディングといったインターネットを利用する協力の仕組みが充実してきたことが挙げられる。また、それらのツールによって日本全国の製造業の“バーチャルな”ネットワークが急激に構築されていった。そして、コマ大戦などを通じ日本全国の製造業が“リアルに”つながっていった。そのつながりの中で、本当に多くの方々にご協力いただき、初の自社製品を販売できた。

 モノづくりは、人と人とのつながりなしでは成し得ない。今回の取り組みは、関わっていただいた皆さんが真剣に、そして楽しんでモノづくりに取り組んだ結晶と思える。またそれは日本のモノづくりの新たなプラットフォームになり得る。

 大手メーカーを頂点としたピラミット構造ではなく、バーチャルとリアルとでつながった中小製造業の会社同士が、元請けや下請けなど関係なく、パートナーとして自社の技術を出し合い、今までにない魅力的な自社製品がどんどんと世の中にリリースされていく時代になるのだ。考えただけでワクワクして、今日もつい夜ふかしをしてしまう……。

Profile

藤沢 秀行(ふじさわ ひでゆき)

1973年横浜生まれ。プレス金型屋の2代目。入社当時は、マシニングセンタや3次元CAD/CAMなどの加工技術を習得。また独自で生産管理システムを開発し運用を行う。2006年に代表取締役に就任。横浜市内の製造業3社を関連会社化し、廃業する企業を引継ぎ雇用を守りながらも事業拡大を進める。社内で開発、設計から金型、量産までの製品づくりを一貫生産できる体制を築き、メーカーの製品開発を多様にサポート。最近では「町工場から楽しいモノづくりを。Made in JAPAN」をテーマに自社製品を開発販売している。

ニットーのWebページ



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