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» 2008年11月25日 00時00分 公開

エレクトロニクスがもたらす利便性と電源系の進化知っておきたいカーエレクトロニクス基礎(9)(3/3 ページ)

[河合寿(元 デンソー) (株)ワールドテック,@IT MONOist]
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電源系とエレクトロニクス

 続いて、カーエレクトロニクスを動かし、自動車のエンジンを始動する“電源系”について説明します。

 自動車のすべての電気・電子装置の電力供給は「バッテリー」「オルタネータ(交流発電機)」との組み合わせによる「電源システム」によって行われます。バッテリーはエンジンを始動させるために、スターターとEFIやESAなどの電気・電子装置に一時的に電力を供給します。この中で最大の電力を必要とするのはスターターです。スターター起動時には60〜120A(エンジン排気量1.0〜3.0L)もの電流がバッテリーから流れます。エンジン始動後はオルタネータが発電してバッテリーを充電します。電気負荷がオルタネータの発電量を上回るときにはバッテリーが放電して不足分を補い、発電量が電気負荷を上回るときにはバッテリーが充電されます。通常走行ではバッテリーを充電する状態になっています。

関連リンク:
ガソリンエンジン制御の主役「EFI」と「ESA」
http://monoist.atmarkit.co.jp/fembedded/articles/carele/05/carele05a.html

 バッテリーは電解液に希硫酸(比重1.28)、陽極に二酸化鉛(PbO2)、陰極に鉛(Pb)を用いた鉛蓄電池です。以下にバッテリーの概要を示します。図7はバッテリーの構造を、図8は化学反応を示しています。

図7 バッテリーの構造

 極板は薄い板になっており、セパレータは陽極と陰極が接触して短絡しないようにする隔離板です。陽極板、セパレータと陰極板が数枚積層されて1セルになり、電解液に浸されています。1セル当たり約2.1Vの起電力を持ち、これを6セル直列接続して12.6Vにしています。

図8 バッテリーの反応

 反応は図8のように、陽極の二酸化鉛は電子を取り入れて硫酸鉛となり、陰極では鉛が硫酸と反応して電子を放出して硫酸鉛となります。この両極に負荷を接続すると、陰極から陽極に電子が移動して、反応の進行によって持続電流が陽極から陰極に流れます。これが放電です。外部から電流を流すと、この逆の進行となり、陽極、陰極と電解液は元に戻ります。放電するとH2O(水)が増えて希硫酸の濃度が薄められ、充電によりH2Oが減り希硫酸の濃度は元に戻ります。バッテリーの性能を示すバッテリー容量はどのくらいの電流をどのくらいの時間放電できるか、つまり「アンペア・アワー」で表します(式1)

アンペア・アワー = 放電電流(A) × 放電時間(h)  ……式1

 しかし、式1は放電電流の大きさによって変わるため、自動車の世界では2つの容量表示で表します。一つは、5時間率容量といい、放電終止電圧に至るまでの5時間持続できる一定電流値Iを乗算した5×I(Ah)で表します。もう一つは、スターター電流のような大電流で放電させたときの容量で、放電開始後5秒目または放電開始後30秒目の放電電圧と放電持続時間の2つで容量を表します。

 オルタネータとは、連載第2回「カーエレの発展に欠かせない“5つのエポック”」で解説したとおり、交流発電機のことですが全波整流して直流にする6個のパワーダイオードと交流発電電圧を制御するレギュレータを内蔵して直流電圧を出力します。レギュレータはオルタネータの界磁電流(直流)を制御して、オルタネータの出力(数十アンペア)を制御します。制御電流は、約4A以下で済みますのでパワートランジスタが小さくて済みます。現在では、このレギュレータはIC化されています。これらはいずれも出力電圧が一定の制御ですが、最近ではさらに進化した制御が行われています。図9に充電制御システムを示します。

図9 充電制御システム

 車両のアイドリング時や定速走行時には発電電圧を下げ、減速時に発電電圧を上げることでオルタネータの発電によるエンジン負荷を低減し、エンジンの低燃費化を図っています。さらに、加速時には電流積算値を目標値に近づけるように発電電圧を調整してバッテリーの寿命を延ばす高度な制御を行っています。このように電源系についてもエレクトロニクスがなくてはならない存在になっています。

 今回は、「コンビニエンス(利便性)とエレクトロニクス」についてと、「電源系とエレクトロニクス」について解説しました。いかがでしたでしょうか? さて、最終回となる次回のテーマは「電子部品の信頼性とカーエレクトロニクスの将来」です。お楽しみに!(次回に続く)

【参考文献】
(1)「カーエレクトロニクス」 志賀 拡、水谷 集治/山海堂
(2)「自動車の電子システム」 荒井 宏/理工学社
(3)「クラウン新型車解説書・修理書・配線図集」 トヨタ自動車
(4)「セルシオ新型車解説書・修理書・配線図集」 トヨタ自動車
(5)「自動車エンジン要素技術 II」 エンジンテクノロジー編集委員会/山海堂

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