サーキットは世界各地にありますので、メディア&テクノロジーセンターは海や大陸を超えてサーキットとやりとりします。通信速度は10Gbpsで、遅延時間は英国から最も遠いオーストラリアでも片道150ミリ秒にとどめています。生放送は1シーズンに430時間以上行われているそうです。テレビ局など向けにグラフィックやCGも制作しますし、1000分の1秒単位で計時も行います。
イベントテクニカルセンターには750台の機器が収納されていますが、ハードウェアを提供しているのは2022年からF1のオフィシャルパートナーで、今回のF1日本グランプリのタイトルスポンサーでもあるLenovo(レノボ)です。イベントテクニカルセンターはサーキット常設ではなく、レースごとに世界各地を移動します。その都度組み立てて設営し500TBのデータ量を受け止めるのだそうです。設営に使える日数は、短い場合で4日間という場合もあるのだとか。
世界中のF1ファンが、場合によってはリアルタイムで待っている中で、遅延なく安定してコンテンツを届けるのは「ミッションクリティカルだ」とLenovo Asia Pacific Solutions and Services Group, Executive Director and General ManagerのFan Ho氏はコメントしています。
あまり知名度のないスポーツだと世界大会の前にメディアなどがルールや見どころなどを詳しく紹介しています。ただ、モータースポーツの多くは既に一定の知名度があるせいか、詳しい人に向けたメディアと詳しいファンで盛り上がっているため、初心者にはハードルが高く見えてしまいます。
しかし、きっかけや見せ方(魅せ方)さえ用意すれば、初心者であっても「すごい! かっこいい!」と盛り上がることができる懐の広さがあると思います。サーキットに行けばもちろん楽しいし、リアルタイムな配信や今後のAR/VR活用などによって行けなくても楽しめる方法も広がろうとしています。
また、“500TB”にはまだまだ使いこなす余地があります。LenovoでChief Marketing Officerを務めるEmily Ketchen氏は「今後もF1のテクニカルな部分でのパートナーシップを継続、拡大してどのようなニーズにも応えていきます」と述べています。どうやって、どんな風に楽しさを伝えていくか、自動車業界にとどまらないさまざまな協力の可能性がありそうですね。
過去のホンダのF1ファンからは「やっぱり買うならホンダのクルマがいいと思った」という話を聞いたことがあります。F1の技術と接点がない車種だとしても、「あのF1で頑張るホンダのクルマである」ということがうれしかったのだそうです。それなりによくできたモノが手ごろな価格で手に入る今、「このブランドがいい」と思う気持ちは薄れてもおかしくありません。F1にかかわる自動車メーカーが増えていく中で、どのようにファンづくりをしていくのか注目したいと思います。
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