まだ面白さや魅力を知らない人に、それをどう伝えるか自動車業界の1週間を振り返る(1/2 ページ)

今週ではなく先週の話題ですが、先日鈴鹿サーキットに行ってきたときのことを紹介します。

» 2023年09月30日 09時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

 週末ですね。9月末ということで、四半期と上半期の終わりでした。皆さまお疲れさまでした。

 今週ではなく先週の話題ですが、先日鈴鹿サーキットに行ってきたときのことを紹介します。先週の鈴鹿サーキットといえば、F1(フォーミュラ・ワン)の日本グランプリです。22日金曜日のフリー走行の日に行ってきました。鈴鹿サーキットの中に入るのは初めてで、観客席の前を一瞬でマシンが通過し、目にもとまらぬ速さでタイヤ交換が終わる様子に終始ドキドキでした。現地であの音や迫力を体感できたのはいい経験になりました。

 私は熱心なF1ファンではなく、どこかのチームをひいきにするほど詳しいわけでもないのですが、F1が企業のブランディングやマーケティング、採用活動に生きるのは一目で納得がいきました。さまざまなルールや制約の中で速さを競う世界最高峰のレースであること、そのために人もマシンも追い込まれることに理屈を超えた魅力があると感じました(その一方で、買って公道を走らせることができるクルマとはかなり離れた領域である印象もあり、経営上の理由でF1から撤退する判断が出てくることにも納得がいきました)。

 2023年5月にホンダがF1復帰を発表し、自動車メーカーではフォードやアウディ、GMのキャデラックブランド、ヒョンデもF1に関心を寄せているとのこと。自動車メーカーが新たにF1にかかわるのは、ファンを増やし、ブランドに対するイメージを向上するのはもちろん、自動車産業そのものに対する印象も変えるかもしれませんね。

 自動車産業が力を入れるいわゆる“CASE”は、いずれも効率を高めムダをなくすことに注力していますが、速く走ることやそのためのテクノロジーやテクニックには自動車ならではの素朴でシンプルな楽しさが詰まっているからです。

 今回のF1日本グランプリ(9月22〜24日)で、鈴鹿サーキットには合計22万2000人が来場し、F1日本グランプリが鈴鹿サーキットに戻ってきた2009年以降では最多だと報じられています。当日の鈴鹿サーキットや名古屋駅、F1チームのSNSアカウントで投稿された来場者とのコミュニケーションの様子を見ていると、来場者はどこかのチームのファンである人が大多数のようですね。ドライバーが登壇するイベントにはたくさんのファンが詰めかけており、スポーツファンと同じようなやり方でチームやドライバーが愛されている様子がうかがえました。

 特定のチームやドライバーを応援する以前のレベルであるF1超初心者の私は、レースや走行中のドライバーに何が起きているかというところから知る必要があり、実況や解説、カメラの映像のありがたみを実感しました。特に、ドライバー目線のカメラや車載カメラの映像は初心者にもとてもうれしいです。SNSには過去のレースでの無線の面白いやりとりなども投稿されており、一言一句のやりとりもレースをより楽しむ上で有益であることが分かってきました。

500テラバイトのデータを受け止める

 F1のレースにどれだけのカメラやマイクが使われているかご存じでしょうか? サーキットには147本のマイクとおよそ25台のカメラが設置され、カメラマンが担ぐカメラの他、スローモーションカメラ各種、無人カメラ、ヘリコプター型の空撮用カメラなども使われています。車両には360度カメラや特注マイクが設置されます。マシンのデータをピットから監視するためのテレメトリーシステムもありますし、各ピットに設置されるカメラもあります。こうしたさまざまなデバイスから集まるデータは、1回のグランプリで500TB(テラバイト)にも上るそうです。

 これにAR(拡張現実)やVR(仮想現実)を取り入れて、ファンエンゲージメントを高めていこうという取り組みが現在検討されているとのこと。世界最高峰のレースで走るドライバーの目線にもっと没入できるようになると、ますます盛り上がりそうですね。F1ドライバーと同じようにリアルでサーキットを走ることは到底実現できませんが、よりリアルに近くに感じられると、モータースポーツやクルマを走らせることの魅力がきっと新しい形で伝わります。

 さて、500TBものデータが無秩序に発生するだけではF1の中継は成立しません。サーキット内のイベントテクニカルセンターに、サーキットに設置された38.5kmのファイバーケーブルや38個のアンテナを通じてデータが全て集約された後、英国ケント州にあるメディア&テクノロジーセンターに送信され、編集された上で配信されています。

過去に開催されたレースでのイベントテクニカルセンター[クリックで拡大] Credit: Steve Domenjoz
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