2023年7月の自動車生産は、半導体の供給改善などにより全体としては回復基調が続いているものの、中国での販売低迷が大きく足を引っ張る格好となった。
2023年7月の自動車生産は、半導体の供給改善などにより全体としては回復基調が続いているものの、中国での販売低迷が大きく足を引っ張る格好となった。
日系乗用車メーカー8社の世界生産台数は、国内生産の回復などにより4社が前年実績を上回り、8社合計では6カ月連続で増加した。ただ、電気自動車(EV)シフトを背景に日系メーカーが苦戦している中国は、全社が2桁パーセント減の生産実績となった。長らく続いた半導体不足からの本格回復が期待される中、中国市場でのEV対応という新たな課題が浮き彫りとなっている。
8社合計の世界生産は、前年同月比1.1%増の205万5090台とプラスを確保したが、増加幅は月を追うごとに縮小している。このうち国内生産は、同13.0%増の74万3347台と、7カ月連続のプラス。ホンダ、ダイハツ工業、三菱自動車を除く5社が増加した。前年が中国のロックダウン明けでの挽回生産が始まっていたことや、ダイハツは仕入れ先の火災による稼働停止が響いた。
海外生産は、前年同月比4.6%減の131万1743台と2カ月連続のマイナス。国内生産と同様に半導体の供給改善により回復しているのが北米で、北米で生産する5社合計は前年同月比29.0%増と高い伸びを見せた。
その一方で、中国は5社合計が前年同月比42.0%減と低迷し、3カ月連続で減少した。2022年末に終了した自動車向け減税措置の反動も一因ではあるが、日系メーカー各社はEVのラインアップが少なく、ガソリンエンジン車やハイブリッド車(HEV)が販売の中心となっていることが大幅減につながっている。これを受けて現地での生産調整を余儀なくされている状況だ。
国内 | 海外 | (うち北米) | (うち中国) | 合計 | |
---|---|---|---|---|---|
トヨタ | 308,686 | 500,714 | 122,002 | 127,804 | 809,400 |
39.2 | 3.3 | 2.5 | ▲ 23.5 | 14.6 | |
スズキ | 82,240 | 212,264 | - | - | 294,504 |
3.9 | ▲ 0.3 | - | - | 0.8 | |
ホンダ | 58,972 | 219,783 | 102,127 | 72,475 | 278,755 |
▲ 4.2 | ▲ 22.5 | 60.0 | ▲ 57.2 | ▲ 19.2 | |
日産 | 63,795 | 207,710 | 89,135 | 57,878 | 271,505 |
22.6 | ▲ 10.8 | 54.0 | ▲ 41.4 | ▲ 4.7 | |
ダイハツ | 52,948 | 72,648 | - | - | 125,596 |
▲ 24.7 | 18.3 | - | - | ▲ 4.6 | |
マツダ | 72,232 | 30,146 | 19,303 | 5,345 | 102,378 |
3.2 | 1.2 | 17.5 | ▲ 28.7 | 2.6 | |
三菱自 | 43,042 | 44,718 | - | 0 | 87,760 |
▲ 0.7 | ▲ 15.7 | - | - | ▲ 8.9 | |
スバル | 61,432 | 23,760 | 23,760 | - | 85,192 |
2.9 | 24.0 | 24.0 | - | 8.0 | |
合計 | 743,347 | 1,311,743 | 356,327 | 263,502 | 2,055,090 |
13.0 | ▲ 4.6 | 29.0 | ▲ 42.0 | 1.1 | |
※上段は台数、下段は前年比増減率。単位:台、% ※北米は、米国、カナダ、メキシコの合計 |
メーカー別に見ると、トヨタ自動車の7月のグローバル生産台数は、前年同月比14.6%増の80万9400台と7カ月連続で前年実績を上回り、7月の世界生産として過去最高を更新した。このうち国内生産は、同39.2%増の30万8686台と7カ月連続のプラス。新型車を中心に国内市場で販売が好調な他、前年の部品供給不足の反動で生産が回復していることが理由。部品供給の改善を受けて、輸出も同19.9%増と3カ月連続のプラスだった。
とはいえ、納期の長期化は依然として解消しているとは言い難く、「アルファード/ヴェルファイア」「プリウス」「クラウン」などの新型車だけでなく、「アクア」「ヤリス/ヤリスクロス」といった量販モデルも受注を停止しており、販売店で取り扱う車種が限られる状況が続いている。
海外生産は、前年同月比3.3%増の50万714台と4カ月連続のプラスで、7月の海外生産として過去最高となった。地域別では、北米が同2.5%増と4カ月連続の増加。前年の半導体不足の反動増が表れた。欧州も同13.7%増と伸長した。
一方、中国は、前年の新規ラインの本格稼働による反動減に加えて、EVシフトを含め販売競争が激化。減産を余儀なくされた結果、前年同月比23.5%減と3カ月連続の前年割れとなった。中国以外のアジアは好調で、インドネシアが同18.6%増、タイも同18.6%増、マレーシアが同29.1%増、台湾が同25.4%増、インドが同2.8倍と主要拠点が軒並み2桁パーセント増を記録したものの、中国の落ち込みをカバーできず、アジアトータルでは同2.7%減と2カ月連続のマイナスだった。
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