GMが諦めたロボタクシー、日産は横浜でどう取り組むのかモビリティサービス(1/4 ページ)

日産自動車はモビリティサービスの実用化に向けて、運転席が無人の状態での公道走行の様子を公開した。

» 2025年03月12日 10時30分 公開
[齊藤由希MONOist]

 日産自動車は2025年3月10日、モビリティサービスの実用化に向けて、運転席が無人の状態での公道走行の様子を公開した。使用したのは日産が独自に開発した車両だ。交差点の右左折が伴うコースを設定し、横浜市みなとみらい地区を走った。

 日産は2017年度から自動運転車によるモビリティサービスの実証実験を実施してきた。これまで蓄積した知見を基に、横浜市内で20台の車両を運用する大規模なサービス実証を2025年10月ごろから2026年度にかけて行う予定だ。台数は5台程度からスタートし、20台まで徐々に拡大する。

 その成果を生かして、2027年度には遠隔監視設備を備えたレベル4の自動運転車によるモビリティサービスの提供を目指す。取り組みは、経済産業省や国土交通省をはじめとする官庁に加えて、横浜市など自治体とも連携して進める。

ドライバーレスの自動運転に対応した実験車両[クリックで拡大]
これまでの自動運転サービスの実験車両[クリックで拡大] 出所:日産自動車

レベル2だけどレベル4?

 今回、運転席が無人の状態で走行した車両は、自動運転の分類としてはレベル2に相当する「遠隔型自動運転」だ。運転席を無人にする代わりに、離れた場所にいる遠隔操作者がドライバーの役割を担っている。

 遠隔操作室の運転者席には車内の運転席と同等の視界や情報表示、ステアリングやペダルなど運転操作機能を備え、遠隔操作者も有効な運転免許を携えた上で臨む。実験車両は道路交通法厳守で走行するが、免許不携帯など違反があれば運転者席に座っている人間の違反点数となる。

 「遠隔操作者は運転できるがほぼ何もしない状態だ。レベル2の体制で実施するが、実質的にはレベル4だ」(日産自動車 総合研究所 モビリティ&AI研究所 エキスパートリーダーの木村健氏)。

ドライバーレスの公道走行を実施する体制[クリックで拡大] 出所:日産自動車
遠隔操作に対応した運転者席[クリックで拡大] 出所:日産自動車

 レベル2に相当する遠隔型自動運転は必要なときに人が介入できるため、レベル4の「特定自動運行」と比べて実証の制約が少ないという特徴がある。特定自動運行はシステムが運転操作を全て行い、人は運転操作に介入できない。運転以外の対応には遠隔監視者が対応する。

 また、特定自動運行は官庁からの審査も厳しくなる。自動運転が可能な条件(ODD、運行設計領域)の設定や車両の安全設計、リスクシナリオへの対応方法などは国土交通省が審査する。遠隔監視装置や警察の現場指示への準拠、事故時の対応などは警察庁や公安委員会が確認する。

 これに対し、遠隔型自動運転であれば、必要な審査は遠隔地にある運転者席の保安基準適合性の確認(国土交通省)や、自立走行能力や走行方法、安全確保装置などを踏まえた道路使用許可(警察庁と都道府県警)となる。

関連する審査などの比較[クリックで拡大] 出所:日産自動車
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