ベアリングは脱炭素にどう貢献するか、自動車や産業機械領域でのNTNの取り組み脱炭素

NTNはカーボンニュートラル達成に向けた事業的取り組みや目標設定に関する説明会をオンラインで開催した。

» 2023年09月26日 10時00分 公開
[池谷翼MONOist]

 NTNは2023年9月15日、カーボンニュートラル達成に向けた事業的取り組みや目標設定に関する説明会をオンラインで開催した。自動車や産業機械向けに展開する製品の特徴などを解説した。

自動車、産業機械向け製品の脱炭素に貢献

 今回の説明会では、各領域で展開する製品カテゴリー別に、顧客のカーボンニュートラル達成にどのような点で貢献し得るかなどを紹介した。

 自動車領域ではEV(電気自動車)関連製品として、ドライブシャフトやハブベアリング、eAxle向け軸受(ベアリング)を紹介した。EVや自動車の電動化ニーズの盛り上がりに対して、省エネルギーかつ高機能な製品をどのように提供しているかを解説した。

自動車領域での製品展開[クリックして拡大] 出所:NTN

 ドライブシャフトではEVのモーターからの動力損失を抑えて、タイヤに動力を高効率で伝達する工夫や、モーターの搭載位置に柔軟に合わせられる高作動角化などを進めている。NTNでは「世界最高水準」(同社)の伝達効率を持つ、独自構造を搭載した高効率固定式等速ジョイントの「CFJ」を展開中で、自動車の省燃費化に貢献するとしている。

 ハブベアリングでは低トルク化や軽量化に加えて、EVの燃費を示す「電費」や操縦安定性の向上のため、高機能なモジュール製品開発を進めている。前輪用ハブベアリングにステアリング補助機能を付与した「sHUB」や、同機能を後輪用に改良した「Ra-sHUB」などの製品を展開する。ハブベアリングにモータージェネレーターを組み合わせることで低燃費化に貢献し得る「eHUB」などの製品もある。

 eAxle向け軸受では高速回転時の発熱や破損を防ぐ仕組みの搭載や、小型/軽量化、低トルク化、高速化に加えて、スパークによる溶解を防ぐ耐電食対応などを進めている。高性能化も図っており、ベアリングの高速回転性能を示すdmn値が「業界最高」(NTN)水準である約220万回転を達成した実績を持つ。EVやハイブリッド車(HEV)向けの深溝玉軸受も展開している。

 産業機械領域では、エネルギー使用量の効率化に貢献する製品やサービスを紹介した。内蔵したセンサーや発電ユニット、無線ユニットなどによる状態監視が可能な「しゃべる軸受」や、常時状態監視と異常分析が行えるアプリケーション「軸受診断アプリ」、スマートフォンなどを活用して手軽に異常診断が行える「NTNポータブル異常検知装置」などを展開する。設備のダウンタイムを最小化することで、電力などの使用量最適化に貢献できるとする。この他、風力発電装置向けの状態監視システム「Wind Doctor」も扱う。

産業機械領域での製品展開[クリックして拡大] 出所:NTN

 これらに加えて、再生可能エネルギーや水素エネルギーのさらなる普及を見据えた製品も多数展開する。再生可能エネルギーで稼働する移動型独立電源「N3(エヌキューブ)」や、水素起因での早期破損を防ぐ「耐水素脆性軸受」などの製品がラインアップされている。

 N3は太陽光発電や風力発電などの設備一式を搭載した貨物輸送用コンテナで、設置場所に到着後、すぐに発電や給電を行える。非常用電源といった使い方の他、内部にトイレなども設置できるため、多機能防災倉庫や仮事務所、バス停などの待合室としても活用できるという。耐水素脆性軸受は新規鋼材の採用と軸受の表面に特殊熱処理技術を施す工夫によって、長寿命化を達成した製品だ。水素圧縮ポンプなどインフラ設備への適用が期待される。

再生可能エネルギーや水素エネルギーの普及を見据えた製品も展開[クリックして拡大] 出所:NTN

インターナルカーボンプライシングも導入

 NTNは2035年度までにグループ内の、2050年度までにサプライチェーン全体でのカーボンニュートラル達成を目標として掲げている。このために、太陽光発電など再生可能エネルギーの導入/購入に加えて、インターナルカーボンプライシングの導入なども進めている。

 また社内のCO2排出量を削減するため、製造ライン/ブロックの消費エネルギーの見える化にも取り組んでいる。代表的な省エネ策を順次実行しており、年間で約1万2100t(トン)のCO2を削減できる見込みだという。各拠点での省エネ活動の情報を閲覧可能なデータベースも整備し、他拠点の活動を参考に取り組めるようにしている。

 NTN グループ経営本部 カーボンニュートラル戦略推進部 部長の山崎雅之氏は「2023年4月からはカーボンニュートラル推進委員会を立ち上げ、目標実現に向けた話し合いをグローバルで行える体制を作った。カーボンニュートラル達成に向けて継続した取り組みを行っていきたい」と語った。

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