AI活用で転がり軸受の余寿命を高精度予測、より正確な交換時期を把握:製造現場向けAI技術
NTNは複数のAI手法を組み合わせた転がり軸受の高精度な余寿命予測技術を開発した。
NTNは2023年8月21日、複数のAI(人工知能)手法を組み合わせて、転がり軸受の高精度な余寿命予測技術を開発したことを発表した。2017年に大阪大学大学院工学研究科に設立した「NTN次世代協働研究所」との共同研究により実現した。
転がり軸受[クリックで拡大]出所:NTN
機械設備に組み込まれた軸受は、使用条件によっては軽微なはく離が発生し、進行すると最悪の場合は破損につながる。ただ、はく離が発生後も機器の構造や設置場所などにより交換などのメンテナンスが難しいと、運転に支障がない範囲において軸受が使用され続けるケースもあるという。
軸受の状態は振動データなどから把握することができる。しかし、はく離などの異常が発生後、どのぐらいの期間、使用できるのか(余寿命)を精度良く把握する方法はなかった。そのため、軸受がまだ使用可能な状態でも早めに交換したり、軸受が破損してから交換したりしなければならなかった。
NTNでは今回、深層学習とベイズ学習を組み合わせて、軸受のはく離が発生してから破損するまでの余寿命の推定精度を向上させた。画像認識に用いられる畳み込みニューラルネットワークと呼ばれる深層学習を、軸受の振動データを画像データに変換して利用することで、軸受の損傷状態や余寿命の予測を可能にした。
さらに、軸受の損傷の進行度合いにおける個体差や測定データのばらつき(誤差)を考慮して予測値の信頼性を評価する階層ベイズ回帰を組み合わせて、信頼性の高い予測モデルを確立した。従来の技術と比較して余寿命の予測精度を約30%向上しているという。
⇒その他の「製造現場向けAI技術」の記事はこちら
- 軸受の診断結果をレポート、設備に取り付けその場で測定
NTNは、軸受の異常を検知する「NTNポータブル異常検知装置」を使用した軸受の診断結果を報告するレポートビジネスを開始した。診断レポートを提供し、機械保全の信頼性向上と工数削減、安定稼働を支援する。
- モノからコトへ、NTNが目指す“軸受を見守る”サービス事業の拡大
NTNは2022年9月28日、「しゃべる軸受」や風力発電装置向け状態監視システム、軸受診断アプリなど、さまざまな事業で展開しているサービスビジネスの動向について説明した。
- NTNが「しゃべる軸受」を開発、センサーと発電/無線ユニットを内蔵
NTNは、センサーと発電ユニット、無線デバイスを軸受に内蔵することで、温度、振動、回転速度の情報を無線送信する「しゃべる軸受」を開発した。装置内部に組み込まれる軸受がセンサーを内蔵するとともに、発電デバイスによって軸受の回転時に得られる電力を用いて無線デバイスを動作させ、センサーデータを自動で無線送信できる。
- 工場の「つながる化」を可能とする「管理シェル」とは何か
ロボット革命イニシアティブ協議会(RRI)の“IoTによる製造ビジネス変革WG(WG1)”では、ドイツが進めるインダストリー4.0において、データ連携を実現する重要なカギとされている「管理シェル」について調査を行い、これを解説する調査報告書をリリースした。本稿ではこの概要を紹介する。
- スマート工場化は次段階へ、AI活用の定着とアプリケーション拡大に期待
スマート工場化の動きは着実に広がっている。その中で2022年はAIを活用した「アプリケーションの拡大」をポイントにデータ活用のさまざまな形が広がる見込みだ。
- スマートファクトリー化がなぜこれほど難しいのか、その整理の第一歩
インダストリー4.0やスマートファクトリー化が注目されてから既に5年以上が経過しています。積極的な取り組みを進める製造業がさまざまな実績を残していっているのにかかわらず、取り組みの意欲がすっかり下がってしまった企業も多く存在し2極化が進んでいるように感じています。そこであらためてスマートファクトリーについての考え方を整理し、分かりやすく紹介する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.