バーチャルPLCとオブジェクト指向でシュナイダーが描く次世代の自動化FAニュース(1/2 ページ)

シュナイダーエレクトリックは記者会見を開き、同社が提唱する次世代制御のコンセプト「ソフトウェア・デファインド・オートメーション(SDA)」について説明した。

» 2025年06月06日 08時00分 公開
[長沢正博MONOist]

 シュナイダーエレクトリック(以下、シュナイダー)は2025年5月29日、東京都内で記者会見を開き、同社が提唱する次世代制御のコンセプト「ソフトウェア・デファインド・オートメーション(SDA)」について説明した。

ソフトウェアで定義することで製造現場に柔軟性を

 自動車業界では次世代の自動車の姿として、ソフトウェアによって自動車の機能を定義し、アップデートさせるSDV(Software Defined Vehicle)が着目されている。SDAとは、従来のハードウェアを主体とした自動化システムから、ソフトウェアを主体としたシステム構築に移行し、製造現場がさまざまな環境の変化に柔軟に対応できるようになることをコンセプトとしている。2025年の3、4月に開催された「Hannover Messe 2025」でも、シュナイダーはSDAをテーマとしたソリューション展示をしたという。

ソフトウェアデファインドオートメーションのコンセプト ソフトウェアデファインドオートメーションのコンセプト[クリックで拡大]出所:シュナイダー
シュナイダーエレクトリックの扇芝謙次氏

 シュナイダーエレクトリック インダストリアルオートメーション事業部 商品企画部 扇芝謙次氏は「今の制御の世界を一言で表すと、まるでジャングルだ。ジャングルは多くの木々が複雑に絡み、重なり合っている。工場の中はまさにこういった状況になっている。具体的には、工場にはメインのコントローラーをベースに何百、何千、何万という機器のデバイスがあり、それぞれのベンダーのソフトウェアを駆使して制御プログラムを組み、システムを構築している。そのため、ジャングルのような状況になっている」と話す。

 不確実性の高まりとともに市場環境の変化の速度は早まっている。製造現場はその変化にデジタルツールやAI(人工知能)を活用して周辺機器と連携し、迅速に対応する必要がある。

「まずハードウェアが選定され、選定されたハードウェアにひもづくベンダーのソフトウェアで設計するというのが、今の工場の在り方だ。そのため、ハードウェアに依存し、拡張性、柔軟性に乏しくなり、上位側のシステムとの連携も容易にできない。SDAでは、ソフトウェアから設計をし、任意のハードウェアを選定するという逆の流れになる。ベンダーにも、ハードウェアにも依存しない、拡張性や柔軟性の高いシステム構築を目指している」(扇芝氏)

ソフトウェアデファインドオートメーションを実現する3つの観点 ソフトウェアデファインドオートメーションを実現する3つの観点[クリックで拡大]出所:シュナイダー

 このSDAをシュナイダーは3つの観点から進める。

 1つ目はオープンエコシステムだ。シュナイダーは2021年に横河電機やインテルら他8社とともに非営利団体「UniversalAutomation.org」を設立した。加盟企業は既に100社を超えている。「この団体では『IEC 61449』をベースとした共通のオートメーションレイヤー、つまりソフトウェアを提供しており、ユーザーがこのソフトウェアを使えば、さまざまなハードウェアを選択できる未来を提供しようとしている」(扇芝氏)。

 2つ目はバーチャル制御だ。従来は、コントローラーなどのハードウェアにソフトウェアがひもづいていたが、これを切り離して、ソフトウェアを資産として運用していく。「ソフトウェアを資産化して、このソフトウェアで動くハードウェアであればどれでも選べる形にする。このソフトウェアは繰り返し利用でき、拡張も簡単にできる」(扇芝氏)。

バーチャル制御でソフトウェアの資産化を図る バーチャル制御でソフトウェアの資産化を図る[クリックで拡大]出所:シュナイダー

 3つ目はデジタル連携となる。幅広いデジタルツールと連携しやすくするため、シュナイダーで取り入れているのがオブジェクト指向エンジニアリングだ。ソフトウェア開発で用いられているオブジェクト指向では、システムを複数のオブジェクト(モノ)で構成されているものとして捉え、構築する。

「バーチャル制御では、オブジェクトは自由に定義できる。工場というオブジェクトの中にライン、コンベヤー、モーターやセンサーまで細分化できる。ここから生まれたデータはコンテキスト化(データの意味付け、データ同士の関連付け)されており、すぐに使える情報になっている。ITとOTの連携、統合が進む」(扇芝氏)

バーチャル制御によるオブジェクト指向エンジニアリングのイメージ[クリックで拡大]出所:シュナイダー
オブジェクト指向エンジニアリングでITとOTの連携、統合が進む[クリックで拡大]出所:シュナイダー
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