2025年5月14〜16日にインテックス大阪で「関西Factory Innovation Week 2025」が初開催された。本稿では、構成展の1つである「[関西]スマート工場EXPO」出展ブースの中から特に印象的だった企業を紹介する。
製造業のスマート化が急速に進む中、多くの企業が直面しているのは、単なる設備導入では解決できない“現場のリアル”だ。熟練者の経験に頼った属人化、紙やExcelによる煩雑な情報管理、慢性的な人手不足、そして現場の安全確保――。こうした課題をいかに克服し、生産性と安定稼働を両立できるかが、スマートファクトリー実現の鍵となっている。
その解決策として注目されているのが、「現場目線」の技術やサービスだ。作業の標準化を支援するツール、蓄積されたデータの可視化、活用を促すシステム、さらには人の負担を軽減しながら安全性を高めるソリューションまで、現場の課題に即したアプローチが次々と生まれている。
本稿では、製造業の「DX化」「自動化」「脱炭素」「人材不足対策」をテーマに、インテックス大阪で初開催された「関西Factory Innovation Week 2025」(2025年5月14〜16日)の構成展の1つである「[関西]スマート工場 EXPO」出展ブースの中から、特に印象的だった企業を紹介する。
TOPPANは、ユーティリティー設備の点検業務を効率化するスマート点検支援サービス「e-Platch(イープラッチ)」を展示した。
省エネの取り組みが求められる一方で、既存設備の更新が難しく、人手による点検業務に依存せざるを得ない現場が多いことを背景に、後付け可能なセンサーとLPWA(低消費電力広域)無線「ZETA」によって、遠隔監視とデータの自動収集を可能にするシステムだ。
クラウド型アプリケーションと連携し、異常時のアラート通知や、工場間のデータ一元管理、CSV出力にも対応している。
実際の導入例では、毎月530時間かかっていた点検業務を約7割削減。外部委託作業の内製化や、塩酸使用量、電力消費量の最適化にもつながり、外部委託作業の内製化で約3500万円、ロス改善で約1500万円のコスト削減を実現したという。
e-Platchは、設備を大きく変えずに始められる点が現場に好評で、面倒な配線工事が要らないなど導入のハードルが低いのも特長だ。
展示ブースでは実機の展示とともに、ZETAネットワークの構成やセンサーの実例も紹介され、スマートファクトリー化を後押しするソリューションとして注目を集めていた。
基板修理を専門とするラヴォックスは「保守切れ設備の延命化」という独自の視点で来場者の関心を集めていた。工場内のあらゆる設備には制御用の基板が使われているが、予算や納期の制約から新機種に更新できず、メーカーの保守期間が終了した機器を使い続けている現場も多い。同社は、そうした設備の基板修理を専門に手掛ける数少ない企業だ。
ラヴォックスの強みは、単なる修理対応にとどまらない点にある。粉じんや湿気、振動など、故障の原因となり得る外的要因を読み取り、再発防止のコーティング提案や作業環境改善のアドバイスも行う。また、部品の調達、代替品の選定、修理箇所の解析データの提供までワンストップで対応しており、技術力と信頼性の高さが評価されている。
基板は機械に比べて構造が複雑で、外からは故障の兆候が見えにくい。そのため、電気系のメンテナンスは後回しにされがちだが、制御系のトラブルは生産ラインの停止といった重大なリスクにつながる。展示ブースでは「見えない部分こそ点検の目を向けてほしい」と、同社の担当者が熱を込めて来場者に語りかけていた。
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