山善は2025国際ロボット展で、ヒューマノイドロボットとAMRの連携デモを公開した。共通基盤により異機種連携を実現。2026年にはデータ生成センターを稼働させ、現場実装を加速する。
山善は「2025国際ロボット展(iREX2025)」(2025年12月3〜6日、東京ビッグサイト)において、INSOL-HIGHと推進しているヒューマノイドロボット導入プロジェクトの最新成果を公開した。ブースでは、ヒューマノイドロボットがピッキングを行い、自律搬送ロボット(AMR)と連携して搬送までを行うデモンストレーションを披露した。
デモンストレーションは、物流倉庫のピッキングステーションを模した環境で行った。ヒューマノイドロボットがカゴの中にあるぬいぐるみとボールを、背後で待機しているAMR上のコンテナへ移し替える。コンテナへのピッキングが完了すると、AMRは自動的に走り出し、コンテナを回収し、出荷場へと搬送する。
山善とINSOL-HIGHは2025年4月に業務提携し、ヒューマノイドロボットの実用化に向けた検証を進めてきた。同年10月には、東京納品代行の物流センター(千葉県市川市)において実証実験を行い、ヒューマノイドロボット単体でのピッキング性能(成功率97%、平均タクトタイム131.0秒)を確認している。
2025国際ロボット展でアップデートした点は、異なるメーカーのロボット同士がシームレスに連携していることだ。使用した機体は、山善が日本企業として初めて導入した中国AGI BOT製のヒューマノイドロボットと、中国Youibot Robotics(ユーアイボットロボティクス)製のAMRである。ロボットの統合制御は、INSOL-HIGHが開発したヒューマノイド特化型プラットフォーム「REAaL」上でAPI連携を行うことで実現した。プラットフォームが指令塔となることで、異なるメーカーのロボットであってもスムーズな協調動作を可能にしている。
ヒューマノイドロボットは、頭部と左右の指先の3カ所に搭載されたカメラによって、対象物を認識、ピッキングしている。REAaL上でもリアルタイムの稼働状況を取得しており、「ケースが空になる」「5個の製品をピッキングする」といったタスク条件を組み込むことで、条件達成を確認し次第、AMRへ搬送指示を送る仕組みだ。
この高度な自律動作を実現する鍵となるのが「学習データ」だ。INSOL-HIGHは、人間がロボットを操作して行う「模倣学習」のデータと、シミュレーター上での学習データを組み合わせることで、ロボットの脳(基盤モデル)を構築している。今回の展示に向けた準備でも、東京納品代行での実証実験時に作成した基礎モデルをベースに、展示会場の環境に合わせた追加学習(ファインチューニング)を行うことで、短期間でのセットアップを実現したという。
山善は、ヒューマノイドロボットの社会実装における最大の課題は「フィジカル学習データの不足」にあると分析している。
「米国NVIDIAなどの海外テック大手はシミュレーター上での学習に強みを持つが、山善は現実世界(フィジカル)での良質なデータ収集に活路を見いだしている」(山善 ヒューマノイドロボット市場開発担当課長の北野峰陽氏)
そのデータ収集の場として設立を進めているのが、「フィジカルデータ生成センター」だ。これは最大50台のヒューマノイドロボットと50人のオペレーターが同時稼働できる大規模なトレーニング施設で、2026年春頃の稼働を目指している。
同センターでは、実際の作業現場に近い環境でオペレーターがロボットを遠隔操作し、その動きをデータとして蓄積する。集められた膨大な「フィジカルデータ」は、ロボットが自律的に動くための教師データとして活用される。INSOL-HIGHを事務局とし、山善を含む10社程度のコンソーシアム形式で行う。なお、サーバ内に蓄積する情報やトレーニング内容は、個社ごとが秘匿に管理できる仕組みとする。
北野氏は今後の展開について、「2026年度内には、工場や倉庫などの実現場への本格導入を目指す」と語る。ロボット本体はレンタルやリース、学習データやプラットフォーム利用料はサブスクリプション(従量課金)で提供するビジネスモデルを想定しており、初期費用を抑えることで導入のハードルを下げる考えだ。
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