ロボット革命イニシアティブ協議会(RRI)の“IoTによる製造ビジネス変革WG(WG1)”では、ドイツが進めるインダストリー4.0において、データ連携を実現する重要なカギとされている「管理シェル」について調査を行い、これを解説する調査報告書をリリースした。本稿ではこの概要を紹介する。
ロボット革命イニシアティブ協議会(RRI)の“IoTによる製造ビジネス変革WG(WG1)”では2018年9月14日、ドイツが進めるモノづくり革新プロジェクト「インダストリー4.0」において、データ連携を実現する重要なカギとされている「管理シェル」について調査を行い、これを解説する調査報告書をリリースした。
第4次産業革命と呼ばれるIoTやAI活用による「データ」を中心とした新たな産業構造への変革の中で、現状でもっとも大きな課題となっているのが、さまざまな異なったシステムやデータを連携させる「つながる化」である。インダストリー4.0ではこの「つながる化」を実現する手法として、「管理シェル」という異種環境差を吸収してデータ連携を実現する仕組みを考案して「実践戦略」などで紹介。
さらに、2016年春に「管理シェルの構造」を発表した。管理シェルはインダストリー4.0を実現する標準化インタフェースとして重要な役割を持つが、この文書だけでは、概念的な部分も多く含まれ、具体的な意味で理解するのが難しかった。そこでRRIでは、ドイツ電気電子工業連盟(ZVEI)やスマートファクトリーの実証、研究プラットフォームである「SmartFactory KL」のホワイトペーパー、インダストリー4.0の推進団体「プラットフォームインダストリー4.0」が2018年8月に発表した「管理シェルの現在の開発状況と今後の予定」などの資料を含めて、管理シェルの概要や意味、意図などを分かりやすく示すためにレポートを作成した。
ドイツのインダストリー4.0の取り組みは政府と産業界、学術界、労働組合などが複合的に理論的な取り組みを重ねており、関連するレポートが数多く発表されている。しかし、日本ではこれらの動きは少ない。こうした現状を受け、RRIのWG1では先行するドイツの動きを解き明かすための取り組みを進めており、今回のレポートはその一環となるものである。インダストリー4.0の取り組みの全体像などについてもあらためて紹介がなされておりこちらはレポートから直接ご確認いただきたいが、本稿ではその中から、同レポートの中心となる「管理シェル」に関する概要を紹介する。技術面、商習慣面ではまだ実現が難しい領域なども存在するがドイツが描く方向性をお伝えしたい。
インダストリー4.0における管理シェルは「アセットをインダストリー4.0の世界につなぐインタフェース」を意味する。アセットは「ある組織にとって価値のあるもの」と定義されており、設備や機械などのモノだけでなく、生産システムや生産計画、注文書など非物質的なものも含まれている。これらを標準化された通信インタフェースで、アセット同士が通信できるようにするものが管理シェルだとされている。
インダストリー4.0やデジタル化の時代には製造技術やオートメーション技術、ITなどでこれまで分かれていた技術分野や業界や業種などが全てネットワークを通じてつながるようになる。これらの異なる分野や業界ではそれぞれ異なる標準や規格を使用してきたが、インダストリー4.0の実現にはそれらを1つに束ねていく必要がある。統一したオープンな標準を作り、インダストリー4.0のエコシステム内で異なるシステムやコンポーネントを円滑に相互運用できるようにする必要があり、その役割を管理シェルが担う。
管理シェルには、アセットなどに関する全ライフサイクルにわたるデータが収集、保存され、インターネット上で識別されるとともに、アセット情報へのアクセスを可能とする。工場などの全ての機器を直接インターネットに接続するのは現実的ではないため、管理シェルを間に挟むことで、インターネット上で仮想的にアセット情報にアクセスできるようにする仕組みである。
このアセットと管理シェルを組み合わせ「インダストリー4.0(デジタル)の世界とつながった価値を生むもの」を「インダストリー4.0コンポーネント」と位置付けている。
アセットが各組織によって価値を生むもの全てを対象とすることを先述したが、インダストリー4.0コンポーネントもその価値の分だけ多種多様である。作業ステーションや機械、機械部品、製品、ソフトウェア、人、非物質的なものなど、あらゆるものが対象となる。
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